拙著最新刊『やっぱり高度経済成長は復活できる――女性の所得倍増こそ最強の政策』を紹介させていただきます
こんにちは
ここには「家族を養うためにカネを稼ぐのは男性である夫の仕事であって、妻は女性の本分として家事や育児に最大の精力を注ぎ、仕事で所得を得ることは副次的な役割にとどまってもいい(あるいは、とどまったほうがいい)」という、男女の役割を固定する世界観が根強く影響しているのではないでしょうか。
また、日本の雇用慣行については「終身雇用」「年功序列」といった形容が頻繁に使われ、新卒時に大手企業に採用されるかどうかによって、勤労者としての一生が左右されるという印象をお持ちの方が多いようですが、その印象は男性についても、女性についても間違っています。次の表をご覧ください。
30代、40代までであれば新しき正規雇用を獲得するチャンスは男性のほうがずっとおおいにもかかわらず、妻が自分の正規雇用を維持することを諦めて転勤する夫についていくことが多いのも、やはり「主な稼ぎ手は夫」という固定観念からくる経済合理性を欠いた判断ではないでしょうか。
「失われた30年」と言われた1990~2010年代も、じつは日本の時間当たり労働生産性は欧米諸国と比べてもそん色のない伸び方を続けていました。ところが、女性がいったん正規雇用を離れると非常に低賃金の非正規雇用・不定時勤務しかできないため、極端に言えば食べていくために最低限の時間しか働かないようになって、実質GDP成長率が低下したのです。
あと3~4日、今月の22日か23日頃から最新刊の拙著、『やっぱり高度経済成長は復活できる』が全国書店にてお買い上げいただけます。
そこで今日は、私がこの本でいちばん強く主張したかったことに焦点を絞って、どんな内容の本なのかご紹介させていただきます。
いちばん声を励まして訴えたかったのは「日本の勤労女性の所得は低すぎる。とくに子どもを育てながら働いているシングルマザーの所得は、子どもを健康に育てられるか不安になるほど低い」ということです。
上の書影でもご覧いただけるように、帯なしの表紙では「女性の所得倍増こそ最強の政策」というサブタイトルを掲げていますが、帯には「シングルマザー所得3倍増計画」と謳っています。
「いったい、倍増したいのか、3倍増にしたいのか分からないじゃないか」とのお叱りの声もありそうですが、日本の勤労女性一般の所得が低すぎる上に、子育てをしながら働いているシングルマザーの所得はもっと低いという、絶望的な現状を指摘したくてこういう表現になったわけです。
日本女性就労環境、5つの最悪
世間では「日本は人口減少によって慢性的な人手不足になっている。この問題を移民や一時的な外国人労働者の導入で補うべきか」といった議論がおこなわれています。
ところが、じつは日本の成人人口の半分以上を占める女性の多くが、本人はもっと身分の安定した雇用条件で、やりがいも責任もあり、所得も大きな仕事をしたいのに、非正規雇用・不定時勤務に追いやられ、男性との間に大きな所得格差が生じています。
私は、この現状を「日本女性の就労環境5つの最悪」と呼んでいます。たいていはOECD諸国の中で最悪という意味ですが、中には主要な新興国や発展途上国を含めても、つまりほとんど世界中でいちばん悪い最悪というケースもあります。順を追ってご紹介していきましょう。
1. 男女間年収格差のジニ係数、OECDで最悪
まず、フルタイム(常時勤務)で働いている男女間の年収格差がOECD諸国でもっとも大きいという事実があります。
アメリカの場合、西ヨーロッパの主要国に比べれば男女間の年収格差は大きいほうですが、日本のように0.4近いほど大きくはありません。旧大英帝国植民地だったカナダやオーストラリアなどとほぼ同じ0.2台の半ばあったりでしょう。
しかも、この男女間年収格差をフルタイム就業という枠を取り払って見れば、日本ではもっとはるかに大きな差になっていることは確実です。
というのも、日本の場合非正規雇用・不定時労働をしている人の比率が男性は約16%なのに、女性は約52%と極端に女性が多く、この人たちの所得は正規雇用・定時勤務の人たちより大幅に低いからです。
2. 子どものいる男女の賃金格差がOECD諸国で最大
次に子どものいる男女間の賃金格差を比べると、子育て中の男女間の賃金格差はOECD諸国の中で日本が最大となっています。
下のグラフは子どものいない男女間での賃金格差(青の棒グラフ)が女性に有利な順に左から右に配列しているので、日本はエストニアに次いで2番目に格差の大きな国にとどまります。2番目に格差が大きいのもかなり問題ですが。
しかし、黒の菱形で示した子どものいる男女間での賃金格差は、日本では男性の賃金が女性の賃金より60%以上も高く、50%弱の韓国を引き離して断トツの首位です。OECD諸国の中では、3位以下には40%を超える男女間賃金格差がある国は1国もありません。
3. 女性科学研究者比率がOECD諸国+旧ソ連東欧圏で最低
さらに、研究職で働いている女性の比率を見ると、日本はOECD諸国と旧ソ連東欧圏諸国の中で最低、しかも下のグラフでご紹介する36ヵ国の中で日本と韓国が13.0%と13.1%と僅差のつばぜり合いをしている以外は、全部18%以上で、うち31ヵ国は科学研究者の4人に1人以上が女性となっています。
この点に関しては、あとでGDPの長期成長率に関して、上のグラフで国名を緑で書いた旧ソ連東欧圏諸国が非常に良い実績を出しているのは、大勢の女性を科学研究者に採用しているので研究開発の陣容が充実していることも貢献していると示唆するデータもご覧いただきます。
4. 日本女性は理科系の適性が非常に高いのに理工系学部進学率が最低
「これほど科学研究者の比率が低いのは、それなりの理由があるはずだ。日本女性は理科系への適性が低いのではないか?」との疑問も出てくるかと思います。ですが、下のグラフ左側でもお分かりのとおり、OECDが何年かに一度実施しているPISAテストで15歳の日本女性は毎回優秀な成績を収めています。
それなのに、右側を見ると大学で理工・数学系の学部に進学する女子学生の比率は、PISAテストで理科平均点が最低周辺に位置している南米諸国の女子学生より低いのです。
なお、「日本女性は成人に近づくにつれて理科系への適性が減衰する」とおっしゃる方もいらっしゃいます。ですがOECDがおこなっている成人力調査でも、日本女性は数学的思考能力で毎回トップクラスに位置しています。
ようするに、せっかく理科系に進学して優秀な成績で卒業しても、その優れた能力を発揮できる仕事に就ける可能性があまりにも低いから、理科系学部に進学しない女子学生が多くなっているのです。
5. 妻の所得が夫と同額以上のカップル比率が世界最低
こうした様々な要因がからみあって、日本はほぼ世界中でいちばん、妻の所得が夫と同額以上のカップルが少ない国です。しかも下から2番目のトルコでも13.5%なのに、その半分にも満たない5.6%という事実は、下のグラフでご確認いただけます。
ここには「家族を養うためにカネを稼ぐのは男性である夫の仕事であって、妻は女性の本分として家事や育児に最大の精力を注ぎ、仕事で所得を得ることは副次的な役割にとどまってもいい(あるいは、とどまったほうがいい)」という、男女の役割を固定する世界観が根強く影響しているのではないでしょうか。
多くの女性を非正規雇用・不定時勤務にとどめるのは大きな社会的損失
こうした、固定的な役割分担意識が多くの女性を身分も不安定で賃金も低く、終了環境も劣悪な仕事に押しとどめることによって、女性の所得一般が男性より大幅に低くなります。
そして、自分の仕事をする能力に自信を持っている女性ほど、その能力を十分に発揮できる仕事に就けず、慢性的に未稼働・低稼働のまま人生を終えるという、社会全体にとって大きな損失をもたらしているのです。
その傍証となるのが次のグラフではないかと、私は思っています。
ですが、もう一つの要因として、NATO諸国に対抗して多くの男性を軍務に就かせていた影響で、当初は仕方なく女性を科学技術の研究者に採用することが多かったため、研究開発に携わる人材が多様化し、経済成長率が高まったとも考えられます。
一方、日本では、男女間の役割固定意識が、次のグラフに見られるような大きな賃金給与格差を生んでいます。
日本では経済を牽引するはずの大企業のほうが昔からの固定的な役割分担意識によって男女間の勤労所得や正規・非正規の雇用形態の格差を大きくしていることが、次のグラフからも読み取れます。
また、日本の雇用慣行については「終身雇用」「年功序列」といった形容が頻繁に使われ、新卒時に大手企業に採用されるかどうかによって、勤労者としての一生が左右されるという印象をお持ちの方が多いようですが、その印象は男性についても、女性についても間違っています。次の表をご覧ください。
逆に女性は、20代で正規雇用を確保できる人が全体の半分にも達しない狭き門なのですが、その狭き門を潜り抜けても、その後加齢とともに間引かれていく生き残り競争のスタートラインにやっと立たせてもらったというだけで、30代、40代、50代、そして60代と正規雇用を確保しいている女性の比率は下がっていくのです。
そして、女性の場合いったん正規雇用の職場から離れると、次にまた正規雇用で採用されることが非常にむずかしく、派遣やパート・アルバイトなどしか働き口がないことも多いのです。
にもかかわらず、夫婦共働きの世帯でどちらかが転勤で引っ越す必要が生じたとき、それまでの職場から退職して伴侶についていくことが圧倒的の多いのは妻のほうだということが、次のグラフからも読み取れます。
30代、40代までであれば新しき正規雇用を獲得するチャンスは男性のほうがずっとおおいにもかかわらず、妻が自分の正規雇用を維持することを諦めて転勤する夫についていくことが多いのも、やはり「主な稼ぎ手は夫」という固定観念からくる経済合理性を欠いた判断ではないでしょうか。
こうして、当初は正規雇用だった女性も含めて、転職・転勤のたびに非正規雇用・不定時勤務しか次の仕事がない女性が増えたことによって、日本経済では非常に長期にわたって総労働時間が減少し続けたのです。
「失われた30年」と言われた1990~2010年代も、じつは日本の時間当たり労働生産性は欧米諸国と比べてもそん色のない伸び方を続けていました。ところが、女性がいったん正規雇用を離れると非常に低賃金の非正規雇用・不定時勤務しかできないため、極端に言えば食べていくために最低限の時間しか働かないようになって、実質GDP成長率が低下したのです。
しかし、これほど就労条件が悪くても、もっと長時間働きたいという人の数は女性のほうが多くて、ほぼ一貫して200万人前後にのぼっています。私はその約半分、100万人くらいは子育てをしながらはたらいているシングルマザーではないかと推定しています。
これまでの日本の大企業は「女性の幸せは結婚し、子供を産み育て、家庭を守ることにある。仕事で多少雇用条件や賃金が悪かったとしても、その分男性社員には当人の貢献度より高めの給料を払っているからそれでいい」的な発想でやってこられたのかもしれません。
ですが、まず女性の幸せや生きがいは女性自身が決めることであって、企業や社会が女性に押しつけるべきことではありません。
さらに、男性にたっぷり給料を払えば、女性の賃金は低くていいという社会的なコンセンサスが存在する結果として、様々な理由で父親のいない家庭で子育てをしながら働く女性へのしわ寄せがあまりにも大きすぎます。
次のグラフの中でもパート・アルバイトで働いている母子世帯の平均就労年収がわずか150万円という数字を見ると、これがそこそこに豊かな生活ができているはずの先進国で暮らしている人たちのおかれた境遇なのかと怒りを覚えます。
そして、女性一般の勤労所得向上と、とくにシングルマザーの勤労所得の大幅な増加は、ほぼ確実に少子化対策としても有効です。
今、日本の47都道府県でいちばん大勢の赤ちゃんが生まれているのは東京都ですが、その中でも23区内の子育て世帯については、年収が約1000万円程度でないと子どもを育てるのがむずかしくなってきたと言われています。その実情は次のグラフが示すとおりです。
日本の勤労者で30代、40代で1000万円以上の年収を得るのは、特殊な技能の持ち主か、大手商社や金融機関のスター社員でもないとむずかしいですが、夫婦がほぼ同水準で400~500万円台の年収を得ることは、男女賃金の平準化ができればそれほど困難ではないでしょう。
むしろ、女性の賃金上昇によって、とくに母子世帯などで画期的な消費拡大が起きてGDP成長率を加速することが期待できます。
読んで頂きありがとうございました🐱
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