パレスチナ問題の核心は何か?

こんにちは
10月7日、パレスチナのガザ地区から出撃したハマス戦闘部隊が、イスラエル南部に広範な奇襲攻撃を仕掛け、イスラエル側に1200名を超える犠牲者を出し、数百名が人質としてガザ地区に連れ去られるという大事件が起きました。

今日は、第二次世界大戦の終結とほぼ同時に発生し、現在に至るまで悪化しつづけてきたイスラエルとパレスチナの領土問題について考えてみようと思います。

国際法違反の侵略をくり返してきたイスラエル

現代の国際法では戦争によって他国の領土を占領し、自国領に変えることは認められていません。交戦中は一時的に敵国の領土を占領することがあっても、平和を回復した時点で一時占領していた領土を相手国に返還することになっています。

しかし、イスラエルは延々と国連決議で定められた国境よりパレスチナ側に自国領土を押し広げ続けてきました。次の4枚組の地図が示すとおりです。


そもそも、国連で分割決議が出る前には、現在のイスラエル領とパレスチナ領を合わせた土地の94%はパレスチナ人の生活圏となっていて、その中にユダヤ系入植者の集落が細々と点在する程度でした。

にもかかわらず、国連決議ではパレスチナ領とイスラエル領がほぼ半々となってしまったのです。

その最大の理由は、落ち目の大英帝国が一方で旧オスマントルコ支配下にあったアラブ系諸民族の独立を認めると言っておきながら、ロスチャイルド家のカネに眼がくらんでユダヤ人の建国も認めると二枚舌を使っていたからです。

つまり、国連決議による2分割自体が、パレスチナ人にとって不満足きわまる解決でした。

しかも、その後もイスラエルは1967年の6日間戦争などの戦争があるたびに国連決議や国際司法裁判所の判決を無視して戦時中に占領した土地に居座ったまま、領土を拡大しつづけてきたのです。

パレスチナは独立国とは言えない

一応パレスチナの国土はヨルダン川西岸地区とガザ地区となっていますが、どちらでも独立して主権を行使できる国土とは言えない状態です。まず、ヨルダン川西岸地区から見ていきましょう。



上の地図では赤く塗られているA地区だけが行政と治安双方をパレスチナ自治政府が担当できていますが、その他の地区では治安をイスラエルに握られている、つまりイスラエルにとって不都合なことはできない仕組みになっています。

そして、今では行政も治安もイスラエルに握られてしまったC地区が、西岸地区全体の6割以上になっているのです。

それでも、一応移動の自由が確保されているだけ西岸地区はマシなのです。もっとはるかに狭い地域に西岸地区の約85%に当たる200万人が押し込められているガザ地区では、その他の地域との出入りすらほぼ完全にイスラエル政府の許可なしにはできない状態です。


なぜガザが「鉄格子と屋根のない世界最大の監獄」と呼ばれているのか、上の地図でおわかりいただけたのではないでしょうか。

イスラエルが何をやっても欧米メディアは批判せず

とくに悲惨なのは海も陸も塞がれたガザ地区に住むパレスチナ人が苦労を重ねて建設した空港が、2001年にイスラエル軍によって爆撃されたことです。まだ完成してから間もない空港がご覧のように無残に破壊しつくされてしまったのです。


空軍基地ではありません。民間航空機が離着陸するための空港です。それがイスラエル軍によって破壊されても、欧米メディアは批判めいたことをひとことも言わない

私が記憶しているかぎりでは、欧米諸国の大手メディアには「いくらなんでもこれはやり過ぎだろう」程度の批判さえ掲載されなかったと思います。

自分たちは延々とユダヤ人を迫害し虐殺してきた先祖を持っているから、罪滅ぼしにユダヤ人が約2000年ぶりに自分たちで建てた国のやることならなんでも受け入れるというなら、自国を犠牲にすべきであって、パレスチナを犠牲にするのはまったく理不尽です。

そもそも、イスラエルとパレスチナとの武力抗争は戦争というにはあまりにも軍事力が違い過ぎる一方的な殺戮行為です。

まず、双方の武力抗争による犠牲者数から比べてみましょう。


縦軸の縮尺を同じにしてみたのですが、イスラエルの犠牲者のほうはぺったり横軸にへばりついたままで年ごとの変化もわからないので、こっちを多少大きめにしてあります。

今年10月以降で大きく変わりそうですが、これまでのところ双方に最大の死者が出た2014年の例で言うと、パレスチナ人の死者が2329人に対して、イスラエルの死者はわずか88人、パレスチナ側にはイスラエル側の26倍の犠牲者が出ていたわけです。

負傷者数になると、その差はもっと大きくなります。
 


イスラエル側に最大の負傷者が出た2014年にはイスラエル1対パレスチナ6.5とやや接近した比率でしたが、パレスチナ側に3万1259人もの負傷者が出た2018年の比率は、じつにイスラエル1対パレスチナ279、パレスチナの負傷者がイスラエルの300倍近くになりました。

こうなるともう、イスラエル側の兵士は安全なところから最新鋭の兵器で装備も劣弱な敵が突進してくるのを射的ゲームでもするように殺傷しまくるだけというのが実情だったでしょう。

今回のハマスによる奇襲作戦でイスラエル側の死傷者が想像を絶するほど多かった最大の理由も、イスラエル軍に「戦争とは一方的に敵側だけに死傷者が出るゲーム」という慢心に近いものがあったためではないでしょうか。

そもそも対テロ・対ゲリラ作戦に精通しているはずのイスラエル軍が敷いた厳重な包囲網をかいくぐってガザから出撃してきたハマス戦闘員を、イスラエル軍が国境近辺で把捉できなかったのは不自然です。

今や完全に親米・親イスラエル政権になってしまったエジプトのシーシ大統領から「ハマスが大作戦を企んでいるから警戒を厳重に」というご注進があったにもかかわらず、明らかに当日のガザ・イスラエル間国境の警備は怠慢でした。

なぜかと言えば、ハマスに適当に暴れさせて、ある程度の被害を出すことによって、できれば挙国一致内閣、最低でも戦時内閣を組閣することで国民の眼を対外戦争に向けたいという願望がネタニヤフ首相にあったからです。

イスラエル国民は反司法改革運動で燃えていた

ネタニヤフは自分の権力をさらに強大化するために、司法の権限を弱めて行政府の権限を肥大化させる「司法改革」を推進していました。でも、自分の権限強化策だということが見え透いていたので、国民のあいだから澎湃たる反司法改革運動が起きてしまいました。



一面にイスラエル国旗がたなびいているので与党支持運動のように見えますが、反司法改革、反ネタニヤフ運動です。そして、なぜかあの悪名高いイスラエルの秘密警察モサドまでもが今回は国民の側に立ってネタニヤフ内閣打倒に乗り出すとの噂が出ていたのです。

ハマスを意図的に引きずりこんで暴れさせることによって、戦時内閣の組閣には成功しましたが「適当に大きな戦果を挙げさせてやる」はずだったハマス戦闘部隊は、想像を超えた被害をイスラエルにもたらしたというわけです。

中でも万年戦争=兵営国家イスラエルにとって深刻だったのは、20~30年も「戦争とは安全な場所から敵を狙い撃ちしていればいい射的ゲーム」という感覚に慣れ切った最前線の兵士たちが、隊伍を組んで組織的な反撃を試みた形跡がない駐屯地が多かったことでしょう。

突然「戦争とは敵兵と命をやり取りすること」という状況に置かれたイスラエル軍前線の兵士たちが足がすくんで射殺されてしまったり、命からがら逃げだすだけだったりして、本来の役割をまっとうできなかったわけです。

ネタニヤフが「ハマスの戦闘員は皆殺しにする」と息巻いているのも、そのへんの事情が広く中東諸国に知れ渡ったら、イスラエルは亡国の危機を迎えるとわかっているからでしょう。

もう手遅れで、アラブ・イスラム世界にはこの話は急速に広まっていると思いますが。でも、イスラエル政府としてはダメージ・コントロールのために、一生懸命ハマス残虐説を広めようとしています

出た、欧米お得意の「敵は残虐な野蛮人」説

次にご紹介するイギリスのタブロイド新聞に載った記事がその一例です。


大規模な作戦行動の最中に赤ん坊ばかり40人集めて、殺して首を斬るといった軍事的にはまったく無意味な行動に時間を割く余裕があるのかと思いますが、信じたい人は信じるのでしょう。

実際のデータではイスラエル側とパレスチナ側のどちらが女性や子どもを平然と殺してきたかと言えば、圧倒的にイスラエルのほうです。


パレスチナ側がかなり女性や子どもを殺さないように努力しているのに比べて、イスラエル側は明らかになるべく大勢男の子を標的にして、将来の戦闘員をまだ抵抗できないうちに殺しておこうという意図がありそうです。

ただ、それだけではなくパレスチナ側があくまでも戦闘行動に参加している敵側の人間と闘っているのに対して、イスラエル側は民間非戦闘員が暮らしている建物を平然と標的にして空爆をくり返しているという点も見逃せません。

というわけで、次の写真に見るようなハマス戦闘員の行動は残虐非道で、その下のイスラエル軍がガザ地区の民間ビルを丸ごと破壊するのは「正当な報復」ということになるわけです。



そしてイスラエル軍は一度失われてしまったら取り返しのつかないような貴重な文化・歴史遺産も平然と破壊します。


見逃してならないのは、多くのイスラエル人だけではなく、イスラエル側のあらゆる蛮行を許しながら、圧倒的に不利な条件で必死の抵抗を試みるアラブ・イスラム勢力を非難する欧米諸国に今も残る人種・民族的優越意識です。

結局は差別・偏見に帰着するのか

先ほどはガザ空港の写真をご覧いただきましたが、他にもアラブ・イスラム勢力によるささやかな抵抗が、まったく不釣り合いに大きな「報復攻撃」を招いた例は数えきれないほど存在します。

たとえば、道路橋のような日常生活に不可欠のインフラが、あっさり破壊されます。


あるいは、何十家族、百何十家族が暮らしていた集合住宅が破壊されます


こんな残虐行為が毎年のように繰り返されていたら、たとえ軍事力ではとうてい太刀打ちできない相手だとわかっていても「どうせ死ぬならせめて一矢報いて死にたい」と思う家族を失った若者がハマスやヒズボラに志願するのも無理ないと思わないのでしょうか。

驚くべきことに多くイスラエル人が「自分たちは周辺に生きているアラブ系の人間、イスラム教徒よりはるかに高等な存在であり、イスラエル人1人はアラブ人20~30人分の価値があるから、我々もほぼ同じ犠牲を出している」と公言しています。

また、やっとたかだか50~60年ほど前にユダヤ人に対する偏見を克服したように見える欧米の人々の多くも、人種・民族的な偏見を払拭したわけではありません

ユダヤ人を自分たちと同格に「格上げ」してやったというだけで、相変わらずアラブ人、アジア人、アフリカ人には偏見を持ちつづけているのです。

そうでなければ、延々と続いたイスラエル軍によるパレスチナ民間人の殺傷を平然と受け流して、今回のハマスによる奇襲作戦の成功だけを大騒ぎで非難するわけがないでしょう。

もちろん、イスラエル人だからと言ってみんなが傲慢な人種差別主義者ではありません。最後に明るい希望の持てるイスラエル人のひとりをご紹介して、今回の投稿を終わりたいと思います。


こういう人たちの声が少しでも強まり、欧米知的エリートの支配力が少しでも弱まることを期待します。

読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想やご質問はコメント欄かTwitter@etsusukemasuda2 にお寄せ頂ければ幸いです。 Foomii→増田悦佐の世界情勢を読む YouTube→増田悦佐のYouTubeチャンネル

コメント

スイーツ さんの投稿…
増田先生、ナチスのホロコーストは断じて許されるべきではない蛮行ですが、ホロコーストをもってユダヤ民族を徹底的に無謬化する行為も問題があります。

キリスト教・ユダヤ教・イスラム教いずれの影響を受けておらず、北方四島・竹島を他国に奪われっぱなしの日本人の感覚から見ると「2000年前に王国があったからといって今さらそれを復活させるなんて無謀じゃない?」「でも、こんな狭い領土くらいなら認めてやってもいいかな?」という感じでしょうか?

しかし、イスラエルは彼らの神が与えていない領土すら主張しています。どうなることやら、、、。
precursor さんの投稿…
この地域の紛争は事情が複雑であり、極東の人々には容易に理解できないと思います。 紛争に直接関与する人々を人種/宗教で少し乱暴に整理すると、以下のように分類できます。

1.アラブ系人種/イスラム教(パレスチナ民族)
2.アラブ系人種/ユダヤ教(スファラディ系ユダヤ民族)
3.東欧系白人種/ユダヤ教(アシュケナジー系ユダヤ民族)

イスラエル(及び米英の経済界)を支配している人間の多くがアシュケナジーなので、「なぜ白人種が中東の地を祖国とするのだろう?」と、少し見識のある人々ならば疑問に思うでしょう。 PLOとの和平を模索しつつも暗殺されたラビン首相はアシュケナジーであり、米英のユダヤ系支配層も彼の姿勢を支持していましたね。 しかし、21世紀以降に勢力を伸張したリクード他の右派政党は、スファラディ系ユダヤ人を支持基盤としています。 不法占拠した地域への入植やハマスへに対する強硬姿勢を支持しているのもスファラディです。

宗教(及びヘブライ語)を共有するスファラディとアシュケナジーの間にも、根深い分断があるようです。 アシュケナジーが牛耳る欧米メディアの偏向した報道内容を妄信することは危険ですが、西欧政治さえも操るアシュケナジー系の人々でさえ、イスラエル国内での人種的分断について公に言及することは滅多にありません。 紛争の種を蒔いた英仏にも大きな責任はありますが、(本心では蔑視している)スファラディの強硬姿勢を咎めることができないアシュケナジーにとっても、同地域の紛争は対応が難しい問題なのだと思います。

私が米国居住時に親しかった隣家は、中流階級のアシュケナジー系ユダヤ人でした。 我が家には友人のバー・ミツヴァで娘が貰ってきたキッパ(帽子)もありますが、米英のようにイスラエルを一方的に支持することはできません。
増田悦佐 さんの投稿…
スイーツ様:
Precursor様:
コメントありがとうございます。
私は、イスラエル軍によるガザ侵略を人種や宗教の問題と捉えると、焦点がずれてしまうと思います。
この投稿以外でも何度か書いたことのくり返しになりますが、これは第二次世界大戦の終結で軍需産業中心に大不況が再来することを恐れたアメリカ政府が贈収賄を合法化して企業利益を強引に高止まりさせる制度をつくり、それに最初に乗ったのがイスラエル・軍需産業ロビーであり、その後も一貫して戦争を続ける口実として人種や宗教における非和解的な対立があるかのように装っているというのが真相だと思っています。
勢久原パワ夫 さんのコメント…
増田先生
イスラエル成立の事情を知っていた(しかも高校の世界史の授業で。今から思えば世界史の先生は左翼であったので少々驚いている)ので、正直「イスラエルは正義」と言わんばかりの世論には不快で、しかも元凶のイギリスさんにはみんなスルーしているのには更に不快で、パレスチナには同情的感情を持っています。
従いまして、ハマスによる奇襲も今までの経緯からして「やられても仕方のない道理ではないか」と思います。
ところで、あれだけの大規模な攻撃にはそれ相応の準備が必要でおそらくは万人単位の人間が動いたはずです。そんな大規模行動をあのモサドが察知できなかったなどありえないのでは?
となるとネタさんがハマスの攻撃を利用しようとガン無視してああなったのか(ホンの火遊びのつもりが大火になったようなものか?)、ああなるのを承知で放置したのか(なんでなのかはわかりませぬ)、単なるモサドの怠慢なのか。
それにしてもこのせいでウクライナ戦争の影が薄くなってますが、あれは流行りモノのイベントでも何でもないのにどういうことか小一時間質したい気分です(誰を質せばいいのか見当がつかないが。朝日新聞?)。
増田悦佐 さんの投稿…
勢久原パワ夫様:
怠慢ではなく、火遊びが大火になったのでもなく、ハマス出撃情報を察知していたイスラエル軍が、この際自国人中心に開催されているライブのミュージックフェスティバル参加者を軍用ヘリで無差別銃撃して、これまでのテロとはけた違いの被害者が出たとして、ガザのパレスチナ人を一掃する(殺すか、難民として他の国に避難させる)を強行したのだと思います。
あのフェスティバルの被害者の大半がイスラエル軍による「誤射」によることは、イスラエル軍も認めています。
また、ウクライナ戦争の影が薄くなったのは、ウクライナ政府自体があまりにもひどくて欧米諸国がそろそろ手を引くために、意図的にやっていることでしょう。
2014年にマイダンクーデターが起きて以来、ロシア系・ロシア話者の多いドンバス2州が独立を前言して以来、ウクライナ軍はイスラエル軍がヨルダン川西岸地区やガザのパレスチナ人にしているのと同じように戦闘力をほとんど持たないこの2州の非武装民間人に対する爆撃機や戦車を使った殺戮を常習してきたので、現在のウクライナ軍の窮状は、むしろやって来たのが遅すぎるぐらいだと私は考えております。
増田悦佐 さんの投稿…
勢久原パワ夫様:
先ほど私が書いたコメントの中で「前言」となっているのは、宣言の間違いでした。お詫びして訂正します。
勢久原パワ夫 さんのコメント…
増田先生
なるほど、ウクライナの腐敗は以前から有名でしたし、今も武器横流しの噂がありますし、ゼレさんは武器とカネをクレクレ君になってますし。
それは支援をするのが嫌になってくるのは当たり前かもしれません。
とはいえロシアを野放しにして「侵略したもん勝ち」の前例になっては困るので(侵略したがっている国が日本の周りに多すぎる…。)ロシアには負けてほしいと思います。実際は停戦に漕ぎ着けるのがせいぜいでしょうが。
ところで、各国が支援した武器の代金支払をウクライナはどうするつもりか、興味深いです。第二次大戦のレンドリースの代金はソ連は踏み倒したとか聞きます。一方ドイツは第一次世界大戦の賠償金を21世紀に完済したという律儀っぷり(ナチスが踏み倒したと思ってました)。
ここまで書いて、戦争における収支やら同盟国への援軍費用の決済とか、重要ながら表沙汰にならない経済ににわかに興味が出ました。一見不可解でもカネの面から見たらそれはそうだろうという切り口がありそうです。何か良い研究書や解説書はあるでしょうか?
増田悦佐 さんの投稿…
勢久原パワ夫様:
第二次世界大戦後、軍事占領した土地を強引に自国領土にしてしまった国はイスラエルだけで、それもアメリカの無条件・全面的な支援があったからこそできたことです。
ウクライナ戦争について言えば、ロシア系・ロシア語話者が多く親米武力クーデターが起きた時点で独立を宣言したドンバス2州をウクライナ軍が、ちょうど今イスラエル軍がパレスチナに対してやっているように民間非戦闘員を虐殺する軍事行動を8年も続けていたからこそ、ロシアによる軍事侵攻を招いたのであって、現時点で突然日本を侵略する国があるとは思いません。
戦争の経済面については、おこがましいですが私が2017年にPHP研究所から出した『戦争と平和の経済学――世界は今、500年に一度の大転換期だ』で、かなり多くの資料を渉猟して検討しております。
第一次世界大戦に限定した叙述ですが、フォルカー・ベルクハーン著、鍋谷郁太郎訳『第一次世界大戦 1914-1918』(東海大学文学部叢書、2014年)は、第一次大戦でアメリカの金準備は1280億マルク増加しただけだったが、日本の金準備は1830億マルクも増えたといった貴重な情報が書いてあります。
どちらも今では手に入りにくい本になってしまいましたが、どこかでお見かけになったらぜひお読みください。