ホワイト企業認証制度の導入とともに、労働側も声を上げるべき ご質問にお答えします その32

こんにちは
かなり重要なご質問をいただきましたので、今日はそれにお答えさせていただきます。

ご質問:私はこれまでの就職経験から「日本はもう少し労働時間を減らすなど、労働環境を改善したほうがうまく経済が回り幸福度も増すのではないか」と考え、「勤怠データや従業員幸福度調査などのデータに基づいてホワイト企業を認証する事業」をできたらと考えています。

このようなホワイト認証を普及できた場合どのような効果が見込めるか、また副作用もあるかなど伺いたいです。

お答え:労働環境の改善や賃金の上昇は確実に経済成長率を高めるとともに、日本国民全体の幸福度を上げると思います。ホワイト企業認証制度は試してみる価値があるでしょう。

副作用としては、ホワイト企業認証に使うデータの集計・分析を地方自治体がおこなうにしても、民間の研究所や世論調査企業などに委託するにしても、企業側がワイロで高い点を取ろうとするとか、調査企業がワイロを要求するとかが考えられます。

ですが、日本の場合、上は大統領から下は自治体職員までワイロ漬けになっているアメリカと違い、そうした弊害があまりにも横行して信頼を失うところまでは行かないでしょう。あまり心配する必要はないと思います。

ただ、こうした第三者による制度的な改善もさることながら、これはやはり働く側にいる人間が声を上げるべき問題だ、と私は思います。

最低賃金が低すぎるのは事実だが

最大の理由は、公的機関の介入によって労働者の待遇を改善するという議論の中には、非常に危険な要素があると思っているからです。

その代表的な例が賃金大幅底上げ論、具体的には「最低賃金を一挙に1200円とか1500円とかにせよ」という主張だと思います。

そこには、一見勤労者の味方のようで、じつは製造業全盛期の遺物でしかない大企業と正規・定時労働者優遇論がひそんでいるからです。

その行き着く先は、サービス業でさえアメリカ型の画一的で味気ないサービスを高い価格で消費者に押しつける大企業ばかりが繁栄する、いびつなサービス主導経済でしょう。

「日本の最低賃金は低すぎるし、もっと高い伸び率で上げて行くべきだ」という点については、完全に同意します。


未だに加重全国平均で1000円台にさえ届いていないのは、いくらなんでも低すぎます。ただ、この最低賃金をいきなり大幅に上げろという議論には、賛成できません

最低賃金大幅引き上げ論者の主張は、大ざっぱに言えば以下のとおりだと思います。

「低賃金が指摘される日本経済でも、大手製造業の正規雇用での賃金はそれほど低くない。問題は、最低賃金さえ払えない中小零細企業が非正規労働者を極端な低賃金で雇って生き延びていることだ。最低賃金を大幅に引き上げれば、こうした中小零細企業が大量に潰れるし、非正規労働も減って、勤労者全体の所得が上がって経済成長率も高まる

かんたんに言えば、中小零細企業・非正規労働切り捨て論です。これは、大企業であることが実際に効率的であった製造業主導経済では部分的に正しかったところもありましたが、サービス業主導の現代経済ではまったく見当外れな議論だと思います。

日本の若者たちは仕事に何を望んでいるか

まず、現代日本の若い人たちが将来自分が就く仕事にどんなことを望んでいるかを見てみましょう。


「とても重要」と「まあ重要」を合わせたパーセンテージで並べると、「安定性」が88.8%でトップ、「高収入」が88.7%で2位に続いて、3位のやりたいことができる」が88.5%となっています。

この3つの選択肢は、ほとんど意味のある差がないほど重要視されている項目だと思います。

4位は「福利厚生の充実」で85.2%となっていて、これはちょっと重要度が下がると考えていいでしょう。ただ、この4項目と、5位位以下の項目とのあいだには、かなり重要度の違いがあると見るべきです。

最下位が「実力主義で偉くなれる」で51.6%しか重視する人がいないことにも、注目しておきたいと思います。

じつは悲惨なアメリカの職場

今度は、実際にアメリカで働いている労働者が、どんなことについて「自分たちの発言権が低すぎる」と考えているかのグラフをご覧ください。


こちらでも「福利厚生」「収入」「雇用の安定」はトップ4を形成していますが、3位に「昇進の機会」が入り、「仕事のやり方を選ぶ権利」がここに取り上げた17項目の中では最下位になっています。

「やりたいことができる」と「仕事のやり方を選べる」ではかなりニュアンスが違いますし、一方はこれから就職先を選ぶという段階、もう一方はすでに働いている段階での要求という差もあります。

ただ、「だから日本人は自分の地位を高める意欲に欠ける。それに比べて、アメリカ人は意欲的ですばらしいという考え方には、私は賛成できません

アメリカの職場は、ほんとうに指揮命令系統の確立された軍隊のような組織になっていて、「仕事のやり方の改善法」とか「問題や衝突を解決する方法」とか「仕事にかかる時間」とか「スケジュール調整」とか「仕事のやり方の選択肢」とかは、管理職の専決事項です。

これとは別のアンケート調査ですが、大手一流企業もふくめた経営者と労働者の意識調査で、アメリカの労働者の約7割が「昼食にたった30分の時間も取れない」という不満を抱いているとの結果が出ていました。

だからこそ、アメリカの労働者は「それぐらいヒラの勤労者でいるうちは不自由を堪え忍ばなければらないなら、偉くなってやろう」と切実に思う人が多くなるのだと思います。

やりたいことができるには時間の余裕も含まれる?

私は、非正規・不定時労働はなるべく少なくするべきものだとは思っていません。次のグラフにもあるように、現実として徐々に増えているのは働く側からもこうした労働形態への需要があるからだと思います。


過剰解釈かもしれませんが、日本の若者たちからの回答で3位に入った「やりたいことができる」仕事には、もし日常業務でやりたいことができなければ他のところでしたいから「定時で必ず出社すること」という縛りのない職場という意味もあるのではないでしょうか。

わたしは、それはとても自然な要求で「非正規は賃金が安くて勤労者全体の所得を押し下げるからで、きるかぎり少数に抑えろ」というよりは「非正規でも、賃金だけでなく福利厚生も時間当たりで正規労働者と同等の処遇をしろ」と要求すべきだと思います。

低すぎる賃金をどう上げていくか?

ただ、現状で日本の賃金水準が低すぎることは間違いない事実です。


上のグラフにもあるとおり、実効為替レートで見ればもちろんのこと、購買力平価で見ても日本の賃金は一般論として低すぎます。

一挙に平均賃金が上がるほど大幅な最低賃金引き上げを実施すべきでしょうか。

私は、いきなり最低賃金を急上昇させて非正規労働に頼らざるを得ない中小零細企業を大量に破綻させるより、じわじわ最低賃金を上げていくべきだと思います。

その賃上げによる人件費上昇分をカバーする自社の製品やサービスの値上げに耐えられる企業は生き残り、耐えられない企業は潰れていくという方向がいちばん妥当ではないでしょうか。

というのも、現在の消費者向けサービス業の世界では、とくに中小零細規模の経営であまりにもいいサービスをあまりにも低価格で提供している企業や個店経営の店が多すぎると思うからです。

たしかに大企業は製造業でもサービス業でも賃金が高い傾向がありますが、反面残業をさせながら勤務時間は定時だけと記録させたり、どう考えても定時でできるはずのない仕事量を課して自宅に仕事を持ち帰らせたりといったブラックな大企業もかなり存在しています。

一挙に最低賃金を大幅に上げてなるべく大勢の勤労者を大企業の正規・定時雇用に集中させるのは、二重に非効率だと思います。

まず、消費者向けサービスには規模の経済どころか規模の不経済が働く分野も多いのに、すでに規模の不経済を生じさせている大企業に勤労者を集めてしまうという非効率があります。

次に、もっと賃金を上げ、自社の製品やサービスも値上げすれば収益が向上するはずなのに、取りあえず低賃金で働いてくれる労働者がいる限り、今のままでいいと考えている中小零細企業を、突然の人件費上昇で破綻させてしまうという非効率があります。

製造業の労働生産性が高い理由は?

次のグラフをご覧になれば、日本の非製造業は明らかに自社のサービスを安売りしているとおわかりいただけると思います。


日本の企業は新入社員を採用するときに仕事をする能力を測定して、優秀な人を製造業へ、あまり優秀でない人を非製造業へと振りわけているのでしょうか。そんなことはないでしょう。

製造業とサービス業でこれだけ労働生産性の格差が広がっている主な理由は、ふたつだと思います。

ひとつは、製造業ではとくに国際金融危機後にかなり大規模な人減らしをして、産業全体の付加価値がGDPに占めるシェアに比べて就業者数を絞りこんだことです。

次の2枚のグラフが、そのへんの事情を明らかにしています。


日本は先進諸国の中ではGDPに占める製造業のシェアが高いほうで、2018年でも20.7%と20%台を保っていました。

ですが、その製造業に従事する勤労者が就労者全体に占めるシェアは、かなり低くなっています


2018年の時点で製造業就業者の全就業者に占める比率は15.9%でした。少ない人数で大きな付加価値を生み出せば、労働生産性は上がります

製造業の場合、とくに国際金融危機が勃発した2007年には18.2%だった就業者シェアが、この危機を抜け出した2010年には16.9%まで下がっています

もうひとつの理由は、非製造業各社が自社のサービスを安売りしすぎていることだと思います。そして、安売りしているから従業員にも低賃金しか払えず、したがって慢性的な人手不足に悩まされているのでしょう。

次のグラフで、非製造業の中でもとくに狭義のサービス業と建設業(こちらは第二次産業、つまりモノづくり産業の一翼を担っていますが)が深刻な人手不足に悩んでいることがわかります。


それではどうすれば、サービス業のさまざまな企業が自社が提供するサービスを値上げする環境をつくれるでしょうか

非正規・不定時労働組合で賃上げ交渉を

私は企業別でも産業別でもなく、労働形態別の労働組合を結成して賃上げ交渉をすべきだと思います。

できれば全国的な組織として立ち上げたいところですが、取りあえずなるべく広い地域をカバーして非正規・不定時の労働に従事している人たちを組織化すべきでしょう。

賃上げ交渉と実際の賃金上昇とのあいだには、かなり高い相関性があります。


労働争議が年間少なくとも4000件、多いときには1万1000件以上起きていた時期には、消費者物価もかなり大幅に上がりましたが、賃金はそれ以上に上がっていたことをご確認ください。つまり、実質賃金が安定的に上昇していたのです。

労働争議が年間2000件台を割るようになってからは、消費者物価変動率がゼロ%近辺で推移してくれているからこそ、わずかながらも実質賃金が上がっていますが、物価上昇率が3%を超えると実質賃金は下がってしまっています

今後の日本経済はインフレ率が2%以上ということが多くなりそうです。おとなしくしていれば物価上昇のしわ寄せをいちばん強烈に感じさせられることになる非正規・不定時の労働者が勇気を持って立ち上がって、賃上げ交渉をすべきでしょう。

日本の賃金水準が底上げされて消費が活性化すれば、企業側も潤うことになるのですから。

読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想やご質問はコメント欄かTwitter@etsusukemasuda2 にお寄せ頂ければ幸いです。 Foomii→増田悦佐の世界情勢を読む YouTube→増田悦佐のYouTubeチャンネル

コメント

スイーツ さんの投稿…
増田先生、前からずっと個人的に疑問に思っていた事を質問します。

日本は賃金が上がっていない、円が安くなっている、先進諸国は賃金も物価も上がっている、何だか欧米や中国の方が素晴らしいとなっていますが、本当にそうなんでしょうか?

海外から観光客が沢山やってきて「日本は物価が安い!」と喜んでいる姿を見ていると、日本がかつての東南アジアのような扱いで日本人として暗澹たる気持ちになります。

しかし、欧米も中国も格差の拡大が日本より遥かに凄まじく(僕にはそう見えます)、そんなに外国を羨む必要はないのでは?と思ったりもします。

尤も、日本の労働者の賃金は上がるべきだし、名前は忘れたけどイギリスから来た経済学者の「中小企業を減らせ」という主張は暴論だと僕は思っています。
ドイトシキ さんの投稿…
●増田悦佐の有料ブログから。

日本は、2030年にはおそらく人類史上初めて人口の30%以上が65歳以上という国になり、労働力人口が減るので実質経済成長率も0.75%くらいに低下する。

アメリカやイギリスは日本ほど高齢化が進まないので、まだ1%前後の実質GDP成長率を保てるという図式です。

ほんとうにそうでしょうか。

私は、日本で65歳以上の人たちが社会的慣習によって働きにくくなっていることには、非常に大きな疑問を持っています。

アメリカでもイギリスでも60代以上の高齢者のあいだでは、肥満を中心とした生活習慣病がかなりひどくて、働きたくても働けない人が多いのが実情です。

とくにアメリカは医療制度全体が贈収賄による不当利得取り放題の世界になっているので、低所得層の高齢者は長年医者にも診てもらえず、生活習慣病が悪化するケースが非常に多いのです。

それに比べて、日本の高齢者は70代、80代になっても健康で勤労意欲も能力も高い人たちが多いことは、個店経営の飲食店などにはっきり出ています。

社会全体として、高齢者が自分のペースで働けるようにすれば、高齢者の増加=労働力人口の減少という図式を回避することはできると思います。

なお、こういう話をすると「今でも大変な若者の職を奪う気か」と批判される方もいらっしゃるでしょう。

ですが、社会全体として雇用に定数枠があるわけではないですし、だれかがしている仕事を横取りしようということではありません。

ぎりぎりに節約した予算で生きている人たちの多い社会より、少しでもおカネを遣う余裕がある人の多い社会のほうが全体として豊かになり、仕事の口も増えるということなのです。
みどりがめマニア さんのコメント…
日本がジリ貧説について
単純に欧米に感化されて労働意欲が落ちているだけというのが現場感覚です。
論拠及び脱線を述べます。
人手不足で募集をかけても誰も応じない。問い合わせすらない。
給料が安いわけではない。例えば型枠大工や足場工などは一人工(一日あたりの支払い)12,000円とか15,000円とかでも(一ヶ月30万から37万にもなる)でもとにかく誰も来ないから「仕方なく」海外実習生を使っていると、使っている方がおっしゃっています。
海外実習生をドレイまがいでなくきちんと使うには、会社側もかなり負担が大きく、寮やアパートを用意したり、工程とは関係なく日本語教室を併設したり、面倒をみる日本人は事実上完全無休に近くなるし、モノになる頃には国に帰るし(投下した資本を回収できないということ)、こりゃ上前を多めにはねないととてもとても。
ちなみに私は当事者そのものではありませんが、当事者がお客様に多いので事情をよく知っているだけです。
さらにさらに、メーカーの某財閥系の大手ですら(あえて名は秘す。名を出すのはやはりまずかろう、と)現場作業員は何年も募集をかけてやっと来たと思ったらすぐ辞める(年齢は関係ない。50代だろうが60代だろうが辞める)。福利厚生や休日管理がしっかりしているにも関わらず。最近はエビデンスがうるさいし、変なことをするとすぐネットに上げられて炎上するので各社上層部はピリピリしております。
でですね、どこの社長もまるで打ち合わせたように「失業者が多いなんて、デマではないのか?」です。弊社も誰も来ないので超高齢化して80近いひとも第一線だったりします。
十数年募集してますが誰も来ませんので。
思うに、皆さん完全週休二日制完全定時、有給休暇取り放題、責任がなく気楽にして高給など超好条件を追求し過ぎではないかと愚考します。そういう会社があれば誰もやめないつまりは空きなど期待できません。
脱線しますが現在は犯罪者にでもならない限り誰も解雇して「空き」を作ることができません。途方も無いグータラだというだけでも解雇できません。こういうことが日常茶飯事なので有能な人材を呼び込むことは現状ほとんど博打です。配属ガチャじゃなく採用ガチャが世の真実です。(悪用を防ぐために詳細は控えますが)自分で勝手にやめても裁判で何年分か給料相当の金額を分捕ることも可能です。
これでは日本再生と言われても。
スイーツ さんの投稿…
増田先生、そして このサイトの皆様にも教えてもらいたくて質問します。

現在、恐ろしい円安が進んでいます。円安=国の価値が低い、なのに岸田も黒川も「絶対」金利を上げようとはしません。

これは、やはり鈴木傾城氏のような売国奴株屋を儲けさせるためなのでしょうか?
増田悦佐 さんの投稿…
スイーツ様:
コメントありがとうございます。
先月13日と16日にご投稿のコメントに、まとめて答えさせていただきます。
まず、物価が安定していることを悪いことだと考える人が多いようです。しかし世の中にはなかなか自分の所得は上がらない人も多く、とくに日本のように高齢化が進んでいる国では年金生活者もどんどん増えるので、物価が安定していること自体は、ちっとも悪いことではなく、むしろ貨幣価値が保たれている良い状態だとと考えるべきです。
現実にどんどん円安が進んで、悪くなっているじゃないか、日本の資産が割安感からどんどん外国人に買われてしまうじゃないかというご反論もあるでしょう。
しかし、本来物価が安定している(つまり貨幣価値が安定している)国の通貨は、物価が上がっている(貨幣価値が下がっている)国の通貨より高くなって当然なのです。
にもかかわらず、日本円が米ドルなど海外通貨に対して安くなっているのは、ひとつには政府・日銀が無理やりに金利を超の字が付く低さにとどめているせいもありますが、むしろ外国為替市場というところが、異常に短期的(というよりは刹那的)な視点で行動しているので「金利が高い国の通貨は金利が低い国の通貨より高利回りが稼げるから買い」という判断で動いているからです。
たいていの場合、金利が高いのは物価がどんどん上がっているので金利も仕方なく引き上げざるを得ないのであり、物価が上がっているということは貨幣価値が下がっているということなのに、そこを見ずにただただどちらの通貨ならより多くの金利収入を稼げるかだけで判断しているのです。
私が外資系の証券会社に勤めていた頃でさえ、外為市場の要員は経済学や数学をきちんと学んだ人より、反射神経が機敏でメンタルにタフな体育会で活躍した人のほうを選んでいました。それが1秒を争う判断しか必要ではなかったもう20~30年昔の話です。今では1秒の100分の1くらいの高頻度取引(High Frequency Trading)をしていますから、判断はもっと反射神経に依存しているでしょう。
インフレ率が高くて貨幣価値の毀損が激しい国の通貨が、インフレ率が低くて貨幣価値が良く保たれている国の通貨より高くなるといった異常事態は、いずれ派手にひっくり返るのは間違いありません。相場のことなので、いつ頃そうなるとは言えませんが。
中小企業をどんどん潰せば経済が良くなるというのは、いまだに重厚長大型製造業主導の経済の基準でしかものを見ることのできない人間の言うことで、まったく現代経済の実態を無視した議論です。サービス業主導の経済では、むしろ中小企業が永く存続できる経済が中長期的に見て伸び率の高い経済ということになるでしょう。
増田悦佐 さんの投稿…
ドイトシキ様:
日本経済の未来について、働く意欲も能力も持った人たちがひとりでも多く働ける社会であって欲しいという拙論をご紹介いただきありがとうございます。
増田悦佐 さんの投稿…
みどりがめマニア様:
コメントありがとうございます。
私は、今後ますます人手不足になっていく中で、職場環境、労働条件、賃金給与が次第に勤労者に有利になっていくのは、必然的でもあり、またいいことだと思っております。
建設現場は、日本のご両親の多くが、よい大学を卒業して知名度の高い企業でオフィスワーカーになることが唯一の正しい職の探し方であるかのように考えていらっしゃることもあって、今も人手不足です。反面、慢性的な人手不足のおかげで、建設現場で働く人たちの待遇はずいぶん良くなりました。
私が建設担当のアナリストをしていた頃は、とうてい無理な工期を長時間残業で間に合わせたことを自慢する現場の所長などもいて、こういう人の指揮した現場は労災や建物自体の安全性などに不安があるなと感じたものですが、最近では工事現場は5時か5時半で水が引いたように人気(ひとけ)がなくなり、オフィスワーカーよりずっと定時で帰れる勤労者が多くなっている印象があります。
今も建設現場の人手不足が続いているのは、まだ人気のあるオフィスワークから建設現場での仕事を選ぶ人が増えるほどには労賃などの雇用条件が良くなっていないのではないかとも思います。
建設現場はずいぶん良くなりましたが、建物の解体現場となると、いまだに「不潔で危険な現場」という先入観を克服して働きに来てくれる人が少なく、業界全体が高齢化しているままのようです。こういう職種についても、社会全体の、あるいは若い人たちの労働意欲の問題と見るよりは、まだまだ雇用条件を改善すべき余地が大きいのではないでしょうか。
また、日本の職場の多くで、雇い主側が勤務態度以外のところで不要な制約を課しているので人が集まりにくいことも多々あるのではないかと思います。
「髪型、髪色自由自在」と書かれたのぼりがはためいているのを見て、美容院か床屋(古いですね)と思ったら、宅配専門のピザチェーンがアルバイト配達員募集のために出していたのぼりでした。
ということは、注文を受けたピザを客先まで届けるだけの仕事に、髪の色や形に制約を設ける雇い主もいるのかとあきれました。おそらく「お客様に見苦しく思われない格好をして欲しい」ということなのでしょうが、その見苦しくない格好というのが、かなりご年配の経営者や重役が考えた見苦しくなさであって、宅配ピザを注文する顧客層とはかけ離れているのではないかという気がします。
また、さまざまな理由でひとつの職場に定着したくない人もいます。日本企業の雇用条件は、その人たちにとってあまりにも不利だということも、なかなか人手不足が解消しない理由ではないでしょうか。
とりとめのない書き方になりましたが、私には日本人一般が労働意欲もなく、なるべく働かずになるべく豊かな暮らしをしたいと思っているという感じはありません。
アメリカで、そういう社会がどう衰退していくかをかなりはっきりと見届けましたが、そうなってしまった社会で「お前たちの労働意欲のなさが問題だ。もっと働け」といったところで手遅れなのです。幸い、日本はまだそうなっていないと思います。