私もカナダの自由トラック隊(Freedom Convoy)を支持します

こんにちは

今日は、今なおカナダ・アメリカ国境沿いに何カ所かで続いている「自由トラック隊(Freedom Convoy)」による国境封鎖と、それを突破しようとするカナダ警察との闘いについて、書きます。

やっぱり、実力行使は血が騒ぎますねえ

実力による国境封鎖と言っても、別にバリケードを組んだり、人が車道に寝転んで「どうしても通りたかったら、オレを轢き殺して行け」といった物騒な手段を使っているわけではありません。

20トン積みとか30トン積みとかの大型トラックを、さすが商売ものでぴっちりすき間なく駐めて後続車両がどう頑張っても通り抜けられないようにするだけの、平和なデモです。

参加者も、けっして大手メディアが書いているような「大型トラックを運転している荒くれ者ばかり」という感じではなく、沿道にいるのもどちらかと言えばデモを支持する人たちのほうが多いようです。


とにかく、国境通過だけではなく、そのほかにも商店、レストランでの食事、人数が何名以上の集会にはワクチン接種証明が必要だとする政策は、明らかに不公平です。

オフィスに行かず家にいて悠々リモートワークができるオフィスワーカー、とくに管理職や研究職のリッチな人たちには、ほとんどなんの苦痛もないのに、どうしても現場に出なければ仕事にならない人たちには非常に過酷な制約になるからです。

これは、知的労働者による現業労働者に対する弾圧だと言いきってもいいほどだと思います。

「それなら、すなおに政府の指示どおりに2回でも、3回でもワクチンを射ってもらって証明書を持ち歩けばいいじゃないか」とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。

はっきり言って、60歳未満の発症者の致死率が1%にも達しないような「疫病」を防ぐために、のちのちどんな副作用、後遺症が出るかわからない、治験も十分ではないワクチンを接種されるのは、この先長い人生が待っている人ほどためらいがあって当然です。

とくに最近では、アメリカ疾病予防管理センターでさえ「ワクチン免疫より自然免疫のほうが長期間にわたって再発症を防ぐ効果が持続する」と言っているのです。

働き盛りでもあり、体が資本だという人たちがワクチン接種を拒否するのはごく自然な反応だと思います。

そして、忘れていただきたくないことがあります。

それは、アメリカやカナダで大型トラックの運転で飯を食っている人たちには「長時間労働のわりに報酬は低いが、とにかく上司に言われたとおりに働かされるのがイヤで、世界一美しい夕陽を見るためなら孤独な作業にも耐えられる」という零細自営業者が多いことです。

彼らにとっていちばん大事な、自分の相棒か分身とも呼ぶべき大型トラックを道路封鎖のために駐めてしまうのは、封鎖が成功しているあいだ中いっさい報酬はないということです。



それにしても、西海岸のバンクーバーを出発してから5泊6日でやっと連邦議会議事堂があるオタワに乗りこんだなどという話を読むと、それだけで血が騒ぎますねえ。

外資系証券会社で「このディールがうまくいけば何百万ドル、何千万ドルのカネが動く」なんて聞かされても、「たかがカネじゃねえか」としか思えませんでしたが。

支持層の広さがデモの正当性を裏付ける

ついでに、旧悪を告白してしまえば、高校生のころから大学生に混じってデモに参加していた身としては、老若男女いろんな人たちが楽しそうにデモに参加しているのが、ほんとうにうらやましい


この抗議行動への幅広い支持層が、先進諸国のエリート知的労働者たちによる世界中の現場労働者に対する弾圧だという事実を物語っていると、私は思っています。

そして、軍服に勲章を飾って抗議活動に参加している現役の軍人もいれば、スター・ウォーズの着ぐるみを着て参加する人もいました。

いやそれほど動きが窮屈そうでもないので、着ぐるみより衣裳と呼ぶべきでしょうか。



こういう平和なデモ隊に対して、カナダ連邦政府、そして最大都市トロントを擁するオンタリオ州の対応は、あまりにも強圧的でした。

オンタリオ州ウィンザーとアメリカのミシガン州デトロイトは、川ひとつ隔てた隣町同士です。

この両市をつなぐアンバサダー橋が封鎖されてしまうと、それでなくてもICチップ不足で停滞しているデトロイト中心の自動車・自動車部品工場の生産活動にさらに大きな遅延が生じます

そこで、ご覧のように装甲車のタラップから身を乗り出して自動小銃を構えた機動隊員のお出ましとなったわけです。


これまでのところ、発砲にいたるほど緊迫した場面はなかったようです。今後もないことをせつに望みます。

去年の暮れ近くに、ロッテルダムのワクチン接種強制反対集会が荒れたときの模様を、ユーチューブで見ていました。

そう言えば、最近の大手テレビ放送網や全国紙では、めったにこういうシーンを報道しませんね。

警官隊が銃を撃って、デモ隊の中から崩れ落ちるように倒れた人がいました。見ていたときは当然威嚇用のゴム弾だろうと思ってそれほど深刻に考えずに見ていたのですが、あとから実弾だったので犠牲者がふたり出ていたと知りました。

人が実際に亡くなる瞬間を見るのは、ほんとうに言いようのないいやな気持ちになるものです。

もちろん、みんなが支持しているわけではない

当然のことながら、このデモに反対する人もいます。


「自由トラック隊」ではなく、「タダのバカ隊」という文句も、上に飾った大型トラックのプラモデル風のおもちゃのうち、1台が崖から滑り落ちるようにしているのも、手間暇かけて造ったのでしょう。

でも、デモの現場ですよ。美術展や画廊で1枚、1枚絵画を鑑賞させていただくわけじゃなくって。こんなに手間をかけるんなら、もっと大きくて派手なプラカードを創ればいいのにと思いますが。

それにしても、いかにも「私はインテリでございます」と言いたげな鋭い目つきをなさっていらっしゃいます。

ですが、政府や完全に製薬資本とゲイツ財団に買収されてこれら勢力の使いっ走りになっている世界保健機関(WHO)の言うことを従順に聞いているだけの「インテリたち」と、「自分の体に入ってくるものは自分で選ぶ」と主張する体が資本の大衆と、どちらがほんとうに自分の頭でものを考えているか、興味深い問題です。

自治体首長たちが反逆し始めた

この平和なデモに緊急事態法を発動するなど、ジャスティン・トルドー首相は相変わらず強硬姿勢を貫いています。

しかし、足元では支持基盤が崩れかけています

とくに、カナダ最大の都市トロントと、連邦政府所在地オタワを擁するオンタリオ州の首相が、ワクチン証明や集会・公共の場所への出入り制限をほぼ全面的に撤廃する意向を示したことは、大打撃でしょう。



オンタリオ州だけではなく、モントリオールとケベックの2都市を持つケベック州も、プリンスエドワード島やノバスコシア州も、同様の規制緩和を検討中とのことです。

カナダもアメリカ同様に連邦制で、州ごとにかなり大幅な自治権が確立されています。

州の首長が知事ではなく首相と呼ばれていることからもおわかりいただけるように、カナダ各州の自治権はアメリカ以上に強いかもしれません

その中で、人口も経済力も圧倒的に大きいオンタリオ州が、基本的にコロナ対策の終焉を感じさせる日常生活への規制解除に動き出したのです。

自国民に対してはコワモテですが、もともとこの二代目首相、外交では対米、対露、対中とどこを相手にしても弱腰な人です。

あっさり、デモ隊に屈服する日も近いのではないでしょうか。

今後の焦点は米ファンド業界?

そろそろ自由トラック隊の勝利が見えてきたところで、重大な汚点を社歴に残してしまった企業があります。

さまざまな運動の資金集めに協力する、「社会性」の高い新興企業として注目を浴びていたGoFundMeです

こともあろうに、自由トラック運動に賛同した人たちが同社宛に送った自由トラック隊の活動資金約1000万カナダドル(約9億円)を勝手に凍結して、「自由トラック隊は違法活動をしているから、自分たちが選んだ慈善団体にこの資金を寄付する」と言い出したのです。

ごうごうたる非難を浴びてから、まず「2月19日までに返還請求があれば、請求者には返還する。請求がなかった資金は予定どおり自分たちが選んだ慈善事業に寄付する」と言いました。

それでも批判が絶えなかったので、最終的には「返還請求を待つのは時間も手間もかかるので、返還先がわかっている寄付者には自動的に返還する」とスタンスを修正しました。

それでも「返還先のわからない金額は自由トラック隊と協議の上、寄付先を決める。だが、自由トラック隊そのものは非合法活動をしている団体だから、そこに資金を渡すことはない」と居直ったのです。

この間、ただひとことの謝罪もありませんでした。

この点については、企業が公式に自社の誤りを認めるとたちまち巨額賠償請求の餌食になるという「訴訟天国」アメリカのわびしい実情も多少からんでいるでしょう。

しかし、私にはGoFundMe経営陣にはいまだに、まったく自分たちが何か悪いことをしたという自覚がないように見えます。

これは、フェイスブック、グーグル、ツィッターその他のソーシャルネットワーキング各社が、自社のプラットフォームから気に入らない主張をする人や組織を排除するたびに感じてきたことでもあります。

彼らは「何が正しく、何が間違っているかを決める権利は自分にある」と本気で思いこんでいるのです。

Stand By Me体験なきおとなたちの時代

突飛なようですが、私はアメリカ初中等教育の欠陥がもろに噴出したのがこの事件の本質だと見ています。

アメリカは、1970年代半ばまで「戦争を知っている子どもたち」が続々育っていた先進国としては珍しい国でした。

ですが、戦争を知っている若者たちとほぼ入れ替わるように、同世代の子どもたちとけんかをしたり、遊んだり、おとなに見守られていない場所に自分たちだけで行ってみたり、といったことをまったく体験していない子どもたちが育ってきました

1950年代以降の全国インターステートハイウェイの建設とともに交通事故多発時代、そして自動車を使った誘拐やギャング同士の抗争などの事件に警察が対応しきれない時代がやって来たのです。

アメリカ中のほとんどの自治体が、子どもは学校が差し向けるスクールバスに乗るか、保護者または保護者の承認を得たおとなの運転するクルマでしか学校に行ってはいけないという法律や条令を制定しました。

これはもう、歩いて2~3分の距離でも、学校のすぐ隣に住んでいても、絶対にダメという自治体がほとんどです。

やがて、自宅のすぐ前でも子どもだけで遊ばせているのは保護者の監督責任放棄として罪に問われるようになりました。

中国が全面監視社会であることは、みなさんよくご存じです。

ところが、アメリカも運転免許を取るまでの子どもたちは、どこに行くにもおとなの監視のもとでしか行動できない社会で生きているという事実は、不思議なほど話題になりません。

その過程で、おとなの監視のない中で子どもたちだけで共同作業をしたり、ちょっと遠くまで旅をしたり、そういう経験がまったくないままおとなになってしまう人たちが大量に出現したのです。

小中学校在学中からギャングや薬物密売団の手先に使われてしまうなどのあまりにも不幸な生い立ちの子ども以外には、ほんとうに深刻な仲間うちの対立も、ほんとうに怖い体験もせずにおとなになってしまった人たちです。

つまり、ベン・E・キングの名曲「Stand By Me」に乗せておとなへの通過儀礼となった小さな冒険旅行を描いた同名映画のような経験をする機会に一生恵まれなかった子どもたちばかりが、おとなになった世界です。


中でも、深刻な意見の対立を仲間うちでどう調整するかを経験しないで育った人たちは、大変です。

それでもまあ、ふつうに企業の新入社員や新米工員、店員となった人たちはいやおうなく上司やお客さん、取引相手などとの関係で他人とのつきあい方を学びます

学生時代のアイデアひとつで起業して順風満帆で億万長者になってしまった人たちが、いちばん危ないと思います。

他人の思惑など関係なく自分が正しいと思って突っ走ってきた道が正しかったと、巨万の富が証明しているわけですから。

だからこそ、判決が出るどころか、まだ起訴も逮捕もされていない人たちについて、自分が「これは正しい」とか「これは間違っている」とか、平然と判断を下せるわけです。

この自分たちがいかに傲慢で独善的な生き方をしているかの自覚さえない世代の最年長者は、1964年生まれのアマゾンの創業CEOジェフ・ベゾスでしょう。

古い世代の億万長者のうちで最年少のビル・ゲイツは、1955年生まれです。

たった9歳違いですが、ゲイツがいかにも敵対者の存在を認識した上で力でねじ伏せる迫力ある風貌なのに対して、ベゾスはつるっと殻を剥いたゆで卵のような顔をしています。

私は、敵対者の存在を押し切って我を通すビル・ゲイツ型のほうがまだしもマシで、ジェフ・ベゾスのように敵対者の存在をまったく意識していないような生き方に怖さを感じます

現に、ジェフ・ベゾスは大企業としては異常なほど過酷で劣悪な労働環境に従業員の大部分を置きながら、政治的、社会的にはリベラルとして平然と自社内ではやったこともないような「理想社会」について語ったりします

しかも、当人には偽善とか、自己欺瞞とか、別人格のふりをしているだけといった後ろめたい意識はまったくなさそうです。

読者の中には「イーロン・マスクは新世代だけど、むしろ敵対者の存在を楽しんでいるようじゃないか」と反論される向きもあるでしょう。

イーロン・マスクは例外中の例外

たしかにそうです。そして、私がイーロン・マスクをたんなるペテン師と言い切れないのは、次のようにまっとう至極のこともときどき言うからです。


でも、マスクが幼少時代を過ごした国は、アメリカではありません。大変苦労しながら大学に行くための準備をしたのはカナダですが、それも18歳になってからです。

それまではどこで育ったかというと、南アフリカ共和国という今もなお白人対黒人ばかりか、英国系の支配階級と旧オランダ移民系の被抑圧白人の根深い人種対立が続く、南アフリカ出身なのです。

イーロン・マスクがときおり示す常識人としての顔は、ほとんど全部南アフリカという出自に依っているのでしょう。

アメリカで苦労知らずで億万長者になると、ほんとうに怖い人格形成をしてしまうと思います。

そして、そろそろ、ビル・ゲイツやジョージ・ソロスやウォーレン・バフェットやヒラリー・クリントンといった旧世代を押しのけて、このつるっと敵対者の存在さえ認知できない億万長者たちが天下を牛耳るときがやってきたように見えます

そんなことになったら怖いなと思っていたのですが、どうやら今年最初の株式市場営業日、1月3日をピークに、ハイテク情報通信インターネット大手が総崩れになる日が秒読みに入ったようです。

その点については、もちろんまた別の機会にしっかり書かせていただきます。

またStand By Me体験のない億万長者たちの怖さについては、『日本人が知らないトランプ後の世界を本当に動かす人たち』に書いておきましたので、ご興味がおありでしたらぜひお読みください。

読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想お待ちしてます。

コメント

匿名 さんのコメント…
増田先生、微笑ましい”トラック運転手デモ”の写真ありがとうございます。

カナダは、州首相(都知事?)が真面な人らしく、無事に州首相の方向で収束すると、嬉しいです。

だだ、デモにかんしては、会社に入りたての頃、労働組合に駆り出されて人数として参加した記憶しかなく、余り良い思い出は有りません。

不勉強で、イーロン・マスク氏が南ア出身との事で、少し驚きました。
確かに、IT・インターネットと立派な看板で商売をされていても、少しその会社の暗部に触れれば、奴隷商人の臭いがそことなく漂って来そうです。

栴檀の葉



増田悦佐 さんの投稿…
栴檀の葉様:
コメントありがとうございます。
カナダ情勢は、緊急事態宣言を発令したトルドーがデモ参加者の口座からは現金を引き出すことさえできないようにしろと金融機関を脅しているそうで、混迷の度合いが深まっています。
こんなに平和で楽しそうなデモを相手に、いったい何を怖がっているのかわかりませんが。
イーロン・マスクはたしかに、平板ではなく多面性を持った人間だと思います。
スイーツ さんの投稿…
 増田先生、僕は「アイドルなき世界経済」を購入してから、先生の大ファンです。先生の本は計4冊購入しました。

 僕はSFC出身ですが、将来イギリスで医学を学びたいと思っています。イギリスは外国人にワクチン接種を強制していない、これだけでも高く評価できると思うのです。
 先生が提言したように「情緒」を武器にした医師になりたいと思っています。
増田悦佐 さんの投稿…
スイーツ様:
大変うれしいコメントをありがとうございます。
現在勉学中とおっしゃる若い読者を得られたというだけでも『アイドルなき世界経済』を書いた甲斐があったと喜んでおります。
今回のコロナ騒動では、イギリスは欧米諸国の中では比較的マシなほうだったという印象は、私も持っています。
ただ、これまで自由で楽しい国という印象があったイタリアがマリオ・ドラギ首相のもと、とんでもない強権国家になってしまった例もありますし、そもそもこの騒動の元凶のひとりがImperial College Londonのニール・ファーガソンだったこともありますので、もし渡英された際は、十分気をつけてお過ごしください。