2022年の世界経済天気予報をお届けします ご質問にお答えします その18

こんにちは

今日もまた、午前中の投稿予定が大幅に遅れてしまったことをお詫びします。

言い訳がましくなりますが、大変おもしろいご質問をいただきましたので、精一杯論理的に正しく、実証データとも合致するお答えを考えるために、資料集めにかなり時間がかかったことをご理解いただければ幸いです。

また、今年1年の〆として、さらに来年1年の計を立てるにあたってのご参考にしていただければ、書き手としてこれに勝る喜びはありません。

ご質問:この2年間は「コロナ騒動」などで散々でした。こんなくだらないことには付き合いきれません。

しかし、世界がどんどん不安定になってきているとも感じます。世界経済は来年、どうなるのでしょうか?

たとえ世界がどう変わろうとも、日本が自由な国として前に進めることを願っております。

お答え:それではまず、天気予報風に全世界の概況からお伝えしましょう。

晴れわたる空の下、地上にくっきりと
描き出されるのは……地獄絵でしょう

のっけから読む気がなくなるほど悲観的な予報になってしまったとしたら、申し訳ありません。

ただ、最後まで読みとおしていただければ、世界中が悲惨な混乱に陥る中で、なぜ日本だけが小春びよりを楽しむことができるのかきちんとご説明しますので、もう少しご辛抱の上お付き合いください。

なんと言っても、世界経済が一度は地獄を見ないと済まないのは、実体経済が低迷しつづけていたというのに、アメリカを中心に金融市場だけができすぎだったからです。


一見すると、国際金融危機からの回復過程と、コロナ危機からの回復過程は大底直後の1年間にかぎってみればほぼ同じだったように感じます。

しかし、その印象は間違っています。

国際金融危機のときには、天井から10ヵ月かけて半値未満の約44%下がってからの回復でした。一方、コロナ危機では天井から3ヵ月も経たないうちに、約67%に下がった程度で底打ちしたのです。

「猫の死骸でも高いところから落とせば高く弾む(Dead Cat Bounce)」という表現があるように、天井からの下げ方がきつければ、その後の反発も大きいのがふつうです。

また、大底から1年後を見てもコロナ危機からの回復はコロナ前のピークより約3割高です。

国際金融危機の大底から1年半後には、まだ直前の天井より約2割低かったのですから、今回の回復は異常なほど順調だったと言えます。

株式市場だけを見ていれば、現状はすでに暴落からの回復というより安定したブル(強気)相場になっていると表現すべきでしょう。

この順調な回復は、実体経済の力強い成長に支えられたものなのでしょうか。

私にはとうていそうは思えないのですが、読者のみなさんが生活実感から受ける感触はいかがでしょうか。

低金利・低インフレが支えて
いた一見順風満帆の金融市場

好調に見えていた世界の株式相場をほぼ単独で引っ張ってきたのがアメリカ株ですが、その脆弱さがはっきりわかる事態が発生しました。

それは、今年11月の消費者物価指数が前年同月比で6.8%増という、約40年ぶりの急上昇を示したことです。


すでに今年の9月以降、これまでの2%前後とは様変わりの年率5%を超すインフレが続いていたのですが、このインフレ率加速がたんに消費者のふところをさびしくする以上の影響を及ぼすことが、徐々にわかってきました。

たとえば、ずいぶん長いこと調整らしい調整もなしに快調に史上最高値を更新しつづけてきたので、そろそろ暴落すると考える人も多かったS&P500株価指数です。

今年に入ってからだけでも約27%も上がっていますから、勇気を奮い起こしてこの指数を買っていた人はさぞ儲かっているだろうと思いがちです。

ところが過去3ヵ月間の消費者物価指数の急上昇で、実質ベースで見るとS&P500の実質収益率は、おそらく第二次世界大戦後最悪のマイナスとなってしまったのです。


あんなに好調に新高値を取りつづけていたS&P500でさえ、わずか3ヵ月インフレ率が急上昇しただけで実質収益率は2%を超えるマイナスになってしまうのですから、つくづくインフレとは怖いものだとわかります。

株だけではありません。この間のインフレ率急騰によって、米国債10年物の実質金利もマイナスに転落してしまいました。


ざっとご覧いただいただけでも、米国債10年物の実質金利がマイナスになるのは、すでに金融パニックが起きていたときか、アメリカが戦争をしていたときだけでした。

まだ金融パニックも起きていないし、戦争に突入したわけでもないのに、10年債の実質金利がマイナスになり、長期保有すれば元本がすり減ってしまうという状態になったのは、これが初めてです。

こうなる兆候はいくつか指摘されていた

後悔先に立たずと言いますが、こうなる兆候はいくつか指摘されていました。

代表的な警告が、発案者である著名な投資家、ウォーレン・バフェットにちなんで命名されたバフェット指標です。

バフェット指標とは、アメリカの株式市場に上場されている全銘柄の時価総額を足し合わせた数値がアメリカのGDPの何倍に当たるかのことです。この指標が1を超えると、株価は暴落するという経験則があります。


ご覧のとおり、今からふり返ってみるとバフェット指標が株式市場を健全に保つ役割を果たしていたのは、せいぜい1970年代までであって、その後は異常事態続きだったことがわかります。

1980年代以降で最初の大相場となったハイテク(英語ではドットコム)・バブルでは株式時価総額はGDPの2倍近くまで跳ね上がりました。

また、1.4倍で暴落に転じた国際金融危機のあとはたった1度0.85倍まで下がっただけで、その後はほぼ一貫して1倍を上回る水準を維持したまま、とうとう直近では2.5倍に達していました。

もうひとつ警鐘を鳴らしていた指標があります。それは、S&P500株式指数中で時価総額トップ5銘柄の時価総額合計がS&P500全体の時価総額の20%を超えると、株価が暴落に転ずるというものです。

こちらも実際にどうだったかを点検してみましょう。


こちらもやはり、警鐘が警鐘の役割を果たしていたのは1970年代までで、その後はあまり有効ではなかったことがわかります。

ただ、1970年代まではアメリカ経済も健全で、たった一握りの銘柄に人気が集中しすぎるときちんと暴落で浮ついた株価の弊害を除去して「ご破算で願いましては」と再出発できていたと考えるのは、ちょっと当時のアメリカ経済を美化しすぎです。

第二次世界大戦直後の1946年に「ロビイング規制法」という名の贈収賄合法化法が連邦議会を通過してからというもの、アメリカの有力産業団体や寡占企業は、ロビイストを通じて自分たちに有利な法律制度を連邦議員たちにつくらせ、楽をしながら儲けるという行動様式がしみついていたからです。

その結果、当面の収益は安定していても、ドイツや日本のメーカーの優秀な製品に押しまくられてアメリカの製造業はそれぞれの業界トップの寡占企業群から衰退していくことになりました。

たとえば、1960年と2010年の時価総額、経済実態それぞれのトップ10社を比較すると、アメリカでは業界トップクラスでも50年存続することすらむずかしいことがよくわかります。

なお、2010年に企業実態ベースで4位に入ったAT&Tは、旧AT&Tがカネに困って社名だけを売り渡した、まったく別の新興通信会社でした。

というわけで、昔はあまり金融業界が強くなかったので、比較的すなおに高い時価総額にあぐらをかいた企業が没落し、少なくとも銘柄の新陳代謝はできていたけれども、最近は金融業界が強くなりすぎたので大商いのできる銘柄が完全に潰れてしまうことを許さなくなり、それだけ企業の「老害」が蓄積しているとは言えるでしょう。

とにかく、現在の米株市場は不健全なほど一握りの大手に人気が集中していることは、明白な事実です。

大手から中小零細銘柄まで網羅したナスダック総合指数を例にとって、時価総額トップ5銘柄とその他全銘柄でどれほど値動きに差があったのかを比べてみましょう。


ご覧のとおり、時価総額トップ5銘柄の入ったナスダック総合指数は、今年年初来で約16%の値上がりとなっています。

ところが、トップ5銘柄をのぞいたナスダック総合指数は、今年2月初めに天井を売って以来延々と下げつづけ、直近では天井から約35%も下がっています

いかにトップ5銘柄だけに値上がりが集中していたかがおわかりいただけると思います。

莫大な待機資金はプラスか、マイナスか

しかし、それでもまだアメリカ株に強気とおっしゃる方がいます。

その人たちがほぼ例外なく根拠として挙げるのは、アメリカの投資用民間総資産約10兆5000億ドルのうち、実際に運用されているのは7兆ドル強に過ぎず、まだ3兆ドル強が投資先を求める待機資金として待っているという事実です。


しかし、この事実はほんとうにアメリカ株の先行きにとってプラス材料なのでしょうか。

金融資産は現金や普通預金として持っているだけでは利益を生みません。ですが、比較的安全でしっかりした金利収入も見こめる投資先があれば、待機資金のままで放置されているのは不自然でしょう。

次のグラフでおわかりいただけるように、世界のGDPの約7割を占める主要18ヵ国の信用衝動がすでにマイナスに転じています。



信用衝動とは、新規融資額マイナス既存融資の償還額がGDPの何割になるかを示す指標です。

この数字がマイナスになるということは、世界全体で新しい事業への融資額より、すでにおこなわれていた融資の償還額のほうが大きい、つまり投資すればかなり高い確率で収益が出そうな投資機会が全世界的に乏しくなっていることを意味します。

つまり、金融市場で株や債券に投資するための待機資金が豊富だということは、実体経済でめぼしい投資先があまりにも不足していることを意味するのです。

こうした環境の中で主要国の中央銀行が量的緩和政策を続けてきたのは、完全に間違いでした。

量的緩和とは、中央銀行が債券・株式市場から金融商品を現金で買って、金融業界にカネが潤沢に回れば、いずれはそれが実物投資に波及し景気も良くなるという政策ですが、まったく効果はありませんでした。

その何よりの証拠は、去年9月の安倍晋三首相の退陣とほぼ同時に、日本銀行が量的緩和政策に見切りをつけたことです。


もし量的緩和政策にほんの少しでもインフレ率を高めたり、景気を浮揚させる効果があったとしたら、首相交代程度のことでこの政策を打ち切るはずはないでしょう。

量的緩和廃止とインフレ率上昇により
借金バブル国家で大量破綻が起きる

これまで、GDP成長率はパッとしなくてもそこそこ安定した経済が営めていた国々の中にも、明らかに借金バブルを起こしていた国がたくさんあります

かなり財務体質の怪しげな会社でも資金のありあまっている金融機関から低利で融資を受けられたために、自社の営業利益だけでは元本の返済はおろか金利負担さえ賄えない、いわゆるゾンビ企業が大量発生している諸国のことです。

個別の国々の民間債務の膨張ぶりをご覧ください。


過去20年間にわたって年率12.4%以上で民間総債務が膨張しつづけた国々、具体的には中国、インド、トルコはどうあがいてもアウトでしょう。

年率8・5~12.4%の範囲内のサウジアラビア、インドネシア、シンガポール、ハンガリー、オーストラリアも、かなり危ないでしょう。

このうち、ハンガリーをのぞく4カ国は中国の資源浪費型「高成長」の恩恵に与っていたからこそ、金融機関も気前よくカネを貸してくれていた企業が多いので、親亀に当たる中国が不動産投資の行き詰まりでこけたら、仲良く連鎖倒産の波に沈んでいくでしょう。

ただし、サウジアラビアだけは「再生可能エネルギー発電ブーム」による人為的な化石燃料需要圧縮の反動を巧みに利用してしぶとく生き抜くかもしれません。この点に関しては、いずれ詳しく論じたいと思います。

ユニークなのは、どう考えても中国への資源輸出大国とも中継貿易拠点とも思えないハンガリーがこのグループに入っていることです。

おそらく、この低金利のご時世に翌日物でも1週間物でも意味のある金利の取れる東欧諸国の債券市場の中では比較的経済が安定しているということで、余剰資金がわっと群がっていたのでしょう。

しかし、そういう資金は本国でのインフレ率がハンガリーで取れる金利を抜いてしまったら、さっさと撤退する足の速い資金です。

その証拠に欧米諸国でインフレ率が加速するや否や、ハンガリー金融当局は6週間で6度もの金利引き上げをおこなって、なんとか外資を自国内に引き留めようとしています


これでなんとか当座はしのげるでしょうが、ハンガリー中で突然急騰した金利が支払えずに破綻する企業は続出するでしょう。

ゾンビはくるりと輪を描か
ず、空中から大量に墜落死

もちろん、これはハンガリー1国だけの問題ではありません。

投資用待機資金が大量にあり、低インフレ、低金利という環境の中で、とうてい本業の利益では返せるはずのない大金を借りてしまった企業の数は膨大です。

しかも、こうした本業キャッシュフローで借入金の元利が返せなくなった企業の圧倒的多数は、本業の業容改善で生き返る見こみのない企業、いわゆるゾンビと化しています


世界中で企業全体の約16%がゾンビであり、その9割近くが二度と生き返る見こみのない永遠のゾンビだというのは、ほんとうに恐ろしい状況です。

金利が1~2%でもゾンビと判定されていた企業は、金利が0.5ポイントとか1ポイントとか上がっただけでも大量に破綻するでしょう。

しかし、その影響がどれほど深刻かは国によって千差万別です。



ご覧のとおり、旧大英帝国系諸国とフランス、イタリアが軒並み全企業の15%以上がゾンビ化している中で、日本だけはゾンビ化率が3%と抜群の健全性を示しています

日本企業も、ハイテク・バブルのさ中にはゾンビ化率12%まで上がったこともありました。

しかし、日本企業だけが21世紀を通じてゾンビ化率を4分の1に押し下げ、ここまで健全に戻れたのです。また、日本の家計も借入圧縮を心がけてきました。

これについては、魔法のような秘訣があったわけではありません

この低金利環境で地道に
借入を圧縮してきた日本

日本企業の大半は、「こんなに借入コストが低いのに、意欲的に業容拡大や新規事業への挑戦をしないのはバカだ」と言われながらも、愚直に借入圧縮に努めてきました

日本の個人世帯もまた、「列島改造論バブル」と「1980年代末地価・株価バブル」に懲りて、その後は資産拡大より借入圧縮を優先する家計を営んできました

その成果を示すのが次の2枚組グラフです。

こうして、「失われた30年」とも呼ばれる1990年以降の30年間に、日本の国民経済はインフレ率や金利の突然の急騰にもっとも強い財務体質を築き上げてきました

唯一の弱点と言えば、国債残高の大きさですが、これもじつは約半分を日本銀行が保有しています。そして、日本銀行は金利目当てに日本国債を持っているわけではありません。

金融業界に現金をばら撒く手段として国債を買い上げていただけです。

だから、今すぐ日本国財務省が「日銀保有の国債に限定して金利ゼロの永久債に借り換えたい」と言って、日銀がこれを受け入れればたちどころに問題は半減します。

さらに、遅まきながら日銀も量的緩和の愚に気づくとともに、この政策を打ち切っても被害は軽微だとも思い当たったようです。

というわけで、世界中で天候は荒れ模様ながら、日本だけは小春びよりを謳歌できるわけです。

それにつけても、「日本と欧米とで違うことがあったら、日本が間違っていて欧米が正しいに決まっている」という偏見の強さには驚きます。

「労働者が減ると労賃は下がり
投資が減少する」という珍理論

次のグラフは「日本ではまっとうな経済の論理が通用しない」という偏見の典型でしょう。


経済学は希少性を探求する社会科学です。

そして「労働力参加人口が減少したら、労働の希少性が高まるから労賃は上がるはずだ」というのが、当然到達すべき結論です。

もしそうならずに労賃が減少したら、どこかにほかの要因があって下がったはずだと考えるのが、多少なりとも経済学を学んだ人間の発想でしょう。

ところが、このグラフを作成した人は「日本では労働力人口が減ると労賃が下がる」と決めつけています。

「日本人は仲間の数が少なくなると賃金交渉で強気に出られなくなって、賃金が下がる」とてもいった「社会的な背景」でも想定しているのでしょうか。

1990年代半ばから1人当たり労働報酬が減少に転じた理由は、はっきりしています

バブル崩壊直前まで、日本は先進諸国でGDP成長率も労働報酬上昇率もトップクラスでした。

その歴然たる事実を無視して、「アメリカ型労働力使い捨てをすれば日本経済の成長力が復活する」という主張を鉦や太鼓ではやし立てた連中が、日本経済を労賃もGDP成長率も低迷する経済に変えてしまったのです。

このグラフの作者は、次のグラフのタイトルに見るような珍妙な理論も展開しています。


これまた、経済学のケの字もわかっていない議論です。

労働力が貴重になったら、その貴重な労働力を補うために投資を増やすのが、まっとうな経済学的議論です。

ところがどうもこの人は、「日本人はそういう代替関係も理解していなくて、一定数の労働者には一定量の設備装置が必要だから、労働者が減ると設備投資も減少させる」という不思議な経済を営んでいると決めつけています。

このふたつの変数の相関性も、見かけだけの相関性です。

日本で1980年代から早くも投資の対GDP比率が顕著な現象に転じたのは、1950~70年代を通じて、日本が最先端の製造業を築いていたからです。

ちょうど1980年代に、先進諸国経済が製造業主導からサービス業主導に転じましたサービス業主導経済では、製造業主導経済よりはるかに少ない固定資産投資やエネルギー・金属資源投入で同じ価値を生み出すことができます

ですから、製造業経済が最先端を行っていた日本は、世界で初めて投資需要の激減という厚い壁にぶち当たったのです。

そして、1980年代後半を通じて無理やりにでも投資を盛り上げるための地価・株価バブルを惹き起こしました

日本国民の偉大なところは、1970年代半ばの「列島改造論」バブルと1980年代後半のバブルというたった2回の失敗で凝りて、その後は無理に投資を拡大する努力をいっさいしなくなったことです。

手を変え品を変え、何度もバブルで投資を拡大しては、その後のツケを国民に回しながら、自分たちだけはぬくぬくと肥え太っているアメリカの金融業界・寡占産業の知的エリートたちとも、やけっぱちの資源浪費で帳面ヅラだけの高成長を「達成」している中国共産党一党独裁政府とも、人間の品格が違います。

日本の過小評価、欧米諸国
過大評価は大歓迎です

それでも、欧米崇拝志向が骨までしみこんだ日本の「知的エリート」たちは、日本が欧米諸国からどう評価されているかに一喜一憂しています。

私に言わせれば、欧米諸国が唯我独尊でどんなにみじめな社会になっても「我々がいちばん偉いんだ」と思ってくれていることには、何ひとつ疑問も不満もありません

たとえば、つい最近2021年版が発表された『経済自由度指数』の上位30ヵ国をご覧ください。


この上位3ヵ国を見ると、経済的自由というのは国際製薬資本やビル・ゲイツが「自由」に儲けるために国民にワクチン接種を強制する、使いっ走り政府を持っているかわいそうな国々のこととしか思えません。

そもそも経済学で言う「自由」とは、自由貿易の手あかにまみれた概念です。

世界で唯一の産業革命先進国だった当時のイギリスが、植民地侵略では先輩のスペイン、ポルトガルや同輩のフランスはワイン醸造国に押しとどめ、そのほかの全世界は原材料供給用の植民地にするために考え出されたのが「自由貿易」なのです。

今やイギリスのあとを継いだアメリカが、ハイテク産業の企画・開発・販売は一手に引き受け、面倒な製造工程は労賃の安い新興国・発展途上国にやらせ、金融収支では対外債務世界一のアメリカが所得を稼ぎ、対外純資産最大級の中国を金融所得収支では赤字に押しとどめるために活用しています

こんなに歪んだ物差しで測った順位が上になってしまったら、むしろそのほうが恥ずかしいようなものです。

こちらはまだ2020年版が最新の『腐敗認知度指数』もまた、滑稽というほかない順位になっています。


そもそも『腐敗度指数』ではなく、『腐敗認知度指数』だというところがミソです。

もし、腐敗度指数だったら、政治家・官僚と財界人とのあいだの贈収賄は「合法的で正当な政治活動」として青天井のワイロがまかり通っているアメリカは、絶対に25位などという高位にはつくはずがないでしょう。

50位台だったはずの中国と同等か、中国より低い順位に収まるはずです。

旧大英帝国植民地諸国は、先住民をほぼ殺し尽くしてから黒人奴隷を導入したり、本国での重罪人を年季奉公人として酷使したりして豊かになったケースが多い国々です。

また、現代においては、金融当局のお目こぼしでのうのうとゾンビ企業が生き延びている率が高い国々でもあります。

こうした国々が、この手の調査のたびに高位につけているのを見ると、現代欧米諸国はまだまだ大英帝国の呪縛から抜け出ていないのだなと、しみじみ感じます。

読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想お待ちしてます。


コメント

匿名 さんのコメント…
ハンガリーについては、10年以上前のスペインの円貨住宅ローン返済を彷彿させます。
おっしゃる通り、ただ金利が安くていままで借りられなかったお金が急に借りられる様になり、たいした期間も無く、金利が急上昇し、金利が払えないので元金も返せでは、生きようがありません。

中華人民共和国と米国と、ある意味超大国?2つものバブルを、間接的にでも生起させた、日本の経済力・金融力は新しい時代を切り開く力になる事を期待しています。

栴檀の葉
YAMADA さんのコメント…
増田さん、いつも大変ありがとうございます。何時も質問にお答え頂き感謝しております。更にこのような深い内容をブログで読ませて頂けて、とても嬉しいです。ブログに関連して”後払い決済BNLP好調”の記事が目に付きましたhttps://jp.reuters.com/article/breakingviews-pay-later-idJPKBN2J10AV
とうとう企業ばかりか、国民も借金漬けにしようと試み始めました。更に地球上の全人口の資産の40%を1%の人が持ってしまったという記事も読みました。意外な事にコメント欄には肯定的な意見が多いんです。努力した人が報われるのは当然と言った意見なんでしょうけど、全くその裏側を知らないのでしょうね?いくらなんでも努力だけで、そこまでの超大金持ちになれる訳ありません。バフェットさんの鉄道網の権益なんか増田さんが書かなければ、誰も知らなかったでしょう。

このゾンビ企業とバブル崩壊を思う時に、”静岡銀行”を思い出します。ほかの金融機関が不動産融資に血眼になっていた時に、厳しい与信基準を崩しませんでした。そして”無能””役立たず”と罵られてましたが、バブルが崩壊した途端にメディアが”立派な銀行”と言いだしたのを覚えています。
リーマンショック前のトヨタも”何故トヨタはGMのように金融をしないんだ!”とメディアに書き立てられていました。車なんか作っていても儲けは知れてる、GMのように金融で儲ければいいんだ!とかなり大声で叫ぶメディアがありました。そしてリーマンショックが起こりGMは倒産、トヨタも苦しみましたが倒産はしておりません。GMはオバマ政権で5兆円もの支援を受けて、なんとか生き延びてますけど。
バブルは別の顔をしてやってくる!と何度も見たり聞いたりしましたが、人類は同じことを繰返しますね?
増田悦佐 さんの投稿…
栴檀の葉様:
コメントありがとうございます。
私も、日本の権力者たちが本格的に悪辣なことをする知恵も肝っ玉もなく、ハードロックバンドのリードボーカルが「のほほん」をキャッチコピーにするほどおっとりした国である限り、世界は自然に日本のマネをするようになると期待しております。
増田悦佐 さんの投稿…
YAMADA様:
コメントありがとうございます。
ご紹介いただいた新手の消費者金融会社、たしかに悪辣なことをたくらんでいますが、記事を最後まで読んでいくと業容拡大につれて赤字が大きくなったというオチがついていて、かわいいなというのが第一印象でした。
でも、あのアマゾンでさえ昔は万年赤字企業だったし、テスラにいたっては今でも正直な決算なら赤字企業ですから、赤字だからといって世に害毒を垂れ流せないわけではない、用心しなけりゃと思いました。
匿名 さんのコメント…
増田先生、ありがとうございます。

終戦後、台湾から復員する人達が、着の身着のまま手荷物も僅かでほとんど身一つで帰るのを見た台湾の人が、あの人達はここで得た物を全て置いて行くのに後ろを振り返らない、日本に帰ってからほとんど無一文から始めなけれならないが、きっとまた、台湾で得たもの以上のものを取り返すに違いないと言うような事を、見た事があります。

その卓見の通りに成りました。

日本人の本質として、働けばいくらでも得られるとの気概を必ず持っているのだと思います。

栴檀の葉
増田悦佐 さんの投稿…
栴檀の葉様:
コメントありがとうございます。
日本の大衆は、たしかに自分が一生懸命に働けば必ず豊かになれるという確信を持っているように見受けます。
これは、おそらく世界中の他の先進国大衆にはない美質でしょう。
ただ、それは日本人に天性備わっている特徴というより、今までどんな支配者のもとで生きてきたかという何十世代、何百世代にもわたる累積効果ではないでしょうか。
最近著の『日本再興……』にも書きましたが、日本の大衆と、世界中ほとんどの国の大衆では、支配者に求めるものが違います。
世界中ほとんどの戦乱に次ぐ戦乱の中で育ってきた大衆は、支配者にどんなに悪辣な手段を使ってもいいから、とにかく敵に勝つことを求めてきました。
大衆にとって、戦争とはたとえ戦勝国側に身を置いていたとしても、命以外全部支配者に捧げても文句を言えない悲惨な境遇にほかなりません。
日本の大衆が支配者に求めてきたのは、だれにも責任の取りようがない自然災害が起きたときに、まっ先に謝ることでした。
日本の大衆がこうした基準で選んだ支配者は、真底あこぎに大衆を搾取することができず、だから日本の大衆は働けば必ず楽になれると信じているのだと思います。
その中で、もし日本社会を欧米型に変えれば、自分たちも欧米知的エリートのように贅沢ざんまいができると思っている日本の知識人たちは滑稽な努力をしています。
悪知恵でも胆力でもまったく使いものにならない彼らは、欧米型社会では日本の大衆よりはるかに低い使いっ走り程度の地位に置かれるでしょうに。