今度の冬は暖冬でもエネルギーコストが急騰するアメリカ

こんばんは
今日は、アメリカ国民にとって、グリーンでもクリーンでもない「再生可能」エネルギー源に頼ることが、いかに高くつく政策かを考えてみます。

2021年10月~2022年3月の暖房費は
かなり温暖な冬になっても高くなる

アメリカ連邦政府エネルギー省エネルギー情報局が、今年10月から来年3月にかけてのエネルギー需給予測を発表しました。

まず、過去約10年間の平均的な寒さだったとしたら、主として暖房に使う光熱が前年同期比でどのくらい高くなるかをご覧ください。


これはあくまでも、今度の冬が平均的な気温と風速にとどまって、とくに寒くも暖かくもなかったと仮定しての数字です。

それでも主要な暖房用エネルギー源としてどれに頼っているとしても、軒並み光熱は上がります。

比較的おだやかな上昇にとどまるのは、電力に頼る世帯ですが、それでも去年から今年の冬に比べて6%増となります。

電力はもともと天然ガスの約2倍のコストがかかるのですが、わりと裕福でプラグをコンセントに差しこむだけで暖が取れる利便性を重視してコストはあまり気にしない世帯ですとか、ガス管が敷設されていない地域であっても、暖房にはあまり大量のエネルギーを使わないで済む比較的温暖な地域の世帯がこのグループに入ります。

圧倒的にコスト競争力が高いので、ガス管が引いてある都市部ではほとんどの家庭が頼っている天然ガスでも30%と、大幅なコスト増になります。

悲劇的なのは、ガス管が通っていないような地方でプロパンガスや灯油焚きの暖房器具に頼らざるを得ない地域に住んでいる世帯です。

こうした地域にお住まいの世帯は、どちらかと言えばあまり裕福ではないことが多いのですが、冬の暖房費は最低でも電力並み、ちょっときびしい冬には電力よりはるかに高いエネルギーコストを払うことになります。

そして、この2つのエネルギー源に頼っている世帯では、プロパンガスの場合にはなんと54%、灯油の場合にも43%とべらぼうな光熱の上昇に見舞われると予測されているのです。

しかも、冬の光熱費が2ケタの上昇となる3つのエネルギー源をお使いの世帯にとっては、冬のエネルギー使用料のほうが夏のエネルギー使用料よりもずっと大きいのです。



ご覧のとおり、冬の暖房を電力に頼っている世帯だけは、夏の光熱費が52%に対して、冬の光熱費が48%と、冷房を多用する夏のほうが光熱費は高くなっています。

でも、天然ガスでは79%、プロパンガスは74%、灯油は65%と、光熱費の大半が冬に集中している世帯で、今度の冬のエネルギーコストの上昇幅は大きくなりそうなのです。

たとえ暖冬でもエネルギー費は上がり、
厳冬ならすさまじい急騰になる

上にご紹介したのは、今度の冬が過去約10年間の平均的な寒さだったと仮定した上での推計です。

だいたい、アメリカ中で暖房を必要とする日の加重積算日数は平均値の10%増から10%減にとどまっていました。

そこで、この±10%を上限と下限として計算すると、光熱費がどう変わるかを推計したのが、次の表です。


たとえ暖房を必要とする日数が過去10年間の平均値より10%少なかったとしても、4つのエネルギー源すべて上昇です。

もともと割高な電力に暖房用エネルギーを頼っていらっしゃった比較的富裕な世帯には4%の上昇は、あまり大きな問題ではないかもしれません。

ですが、天然ガス、プロパンガス、灯油に頼っていらっしゃる世帯には前年比で2割以上の冬の光熱費上昇は、かなり深刻な問題でしょう。

当然のことながら、暖房を必要とする日数が平均値より10%多くなると、もっと悲惨なことになります。

電力に頼っていらっしゃる世帯でさえ前年比15%と無視できない金額になり、天然ガスと灯油では5割以上の激増、プロパンガスに至っては94%増とほぼ2倍です。

何度も言うようですが、
これは純然たる人災です

じつは、2013年10月~2014年3月には、暖房必要日数が平均値の10%増を超える非常に寒い冬でした。

そのときをふくめて、過去10年間の暖房必要日数実績と今度の冬の予測が、次のグラフに示されています。


通常3600~3700日にとどまっている暖房必要日数が約4100日になったのですから、いかに寒い冬だったかがおわかりいただけると思います。

そして、この異常に寒かった2013~14年の冬に、4エネルギー源別の光熱費がどう変わっていたかを最初のグラフでご確認ください。

プロパンガスと灯油は激増しましたが、電力と天然ガスはおだやかな上昇にとどまっています

最大の理由は、2014年の上半期をのぞけばこの間ずっと天然ガス価格が慢性的に100万英国熱量単位(BTU)当たり2~4ドル台という低価格に収まっていたことと、当時はまだアメリカの発電は圧倒的に安上がりで供給量も信頼のおける天然ガス火力に頼っていたことです。

とくに「地球温暖化はフェイクニュースだ」と唱えて、世界主要国の元首の中でただひとり、信念を持って二酸化炭素排出量削減政策を真っ向から批判していたドナルド・トランプが大統領を務めていた時期には天然ガス価格は完全に2~4ドルの底値圏にありました

ところが、かなり大きな不正投票、不正開票疑惑に包まれた2020年の大統領選でジョー・バイデンが当選してからは、原油価格ともに天然ガス価格も急上昇に転じたのです。

原油や天然ガスを大量に供給しているエネルギー産業の世界的な大手としては、設備投資をサボり、供給量を削減すれば、世界中のマスメディアから「二酸化炭素排出量削減に貢献している」と褒めてもらえるのですから、こんなに楽に価格吊り上げができたことはなかったでしょう。

その結果、何が起きたかと言えば当てになるはずのない太陽光発電や風力発電を当てにしてしまったための世界的な電力不足であり、原油・天然ガスばかりか、石炭価格まで急上昇するというエネルギー資源大手にとって笑いの止まらない資源相場なのです。

この推計でもまだまだ楽観的すぎる

じつは、今回発表された光熱費上昇の予測値は、まだまだ控えめすぎるのです。

というのも、この推計の基礎になっている天然ガス価格は、次のグラフでおわかりのように、ヨーロッパで原油1バレル当たりに換算すると200ドルを超す高値になってしまう前の、アジア向けと同水準にとどまっていたころの価格だからです。


現在の価格で推計すれば、もっと大きな値上がりになるでしょう。

「グリーン革命」を標榜している人たちが実際にやっているのは、どんなことでしょうか?

彼らは、大都市圏の比較的裕福な世帯には小さな被害で済むけれども、地方に住むあまり裕福ではない世帯には耐えられないほど大きな打撃を与える政策を推進しているのです。

読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想お待ちしてます。

コメント

土井としき さんの投稿…
確かに、人災です。
私は、ク−ラ-の暖房だけです。
灯油やガスは使いません。
増田悦佐 さんの投稿…
土井としき様:
コメントありがとうございます。
もう本文でご紹介した米国エネルギー省エネルギー情報局のエネルギー価格予想は楽観的すぎ、電気で暖房をしている世帯でもそうとう値上がりになりそうな形勢です。
アメリカだけではなく、日本でもそうなりそうで憂うつです。