コロナ騒動で露呈したアメリカ一流誌の凋落ぶり

こんばんは
今日はアメリカで一流誌と呼ばれてきた雑誌に載っている記事が、いかに無責任なセンセーショナリズムに陥っているかを、新型コロナに関する報道との関連で書いてみます。

昔はアメリカを代表するオピニオン
雑誌だったThe Atlantic

『アトランティック』誌は、ボストンに本社があり、19世紀半ばから続いている由緒ある雑誌です。

創設には、19世紀アメリカを代表する詩人、ラルフ・ウォルドー・エマーソンも参加していて、発行母体の社名はEmerson Collective(エマーソン集団)となっています。

もちろん、文芸評論にも定評がありますが、その他にも政治、経済、社会などさまざまな分野の記事を載せている、日本ではもうほとんど見かけなくなってしまった文化人・知識人御用達の総合誌と言えるでしょう。

しかし、この雑誌もご多分に漏れず、インターネット系のSNSなどに押されて経営が苦しくなっているようで、去年の春ごろアメリカでコヴィッド-19感染が広まったころから、延々とこの感染症に対する恐怖心をあおる記事を掲載しつづけてきました。

その典型が、ウェブ版では去年の11月18日に発表された「病院はもうやっていけない」という記事でしょう。

内容は、「PCR検査で陽性と出たけれども軽症とか自覚症状なしの感染者数を追っていても、コヴィッド-19の深刻さはわからない。どの程度重症患者が出ているかを調べるのに、いちばん信頼できるデータは入院患者数だ」というところから出発します。

そして「アメリカ中の病院という病院が、コヴィッド患者で満杯になっていて、しかも感染率の高い疫病なので病院スタッフにも感染者が激増している。増える一方の患者を院内感染で手薄になったスタッフで治療・看護しなければならないので、もう限界に来ている」と議論を進めます。

結論は「一見入院患者数が激増していないから小康状態に見えるが、じつは本来なら入院しなければならない患者が、入院できずにいるので今後感染致死率が急上昇するに違いない」としていました。

その『アトランティック』誌が、昨日、9月14日付記事で、突然「ほとんど意味がなくなったコロナ入院患者数」という記事を掲載したのですから、びっくりです。

きちんとデータを調べれば、入院患者の
約半数は自覚症状なし・軽症で済んでいた

最近発表された医学研究者7人による退役軍人病院で、コヴィッド-19に感染している入院患者のうち、酸素吸入や集中治療室入りなどの必要性が検討される重症患者の比率を調べると、ワクチン接種済みのグループで42.6%、ワクチン未接種の患者でも55.0%と、ほぼ半数にとどまっていることがわかったというのです。

なお、この調査では重症か、重症でないかの境界を血中の酸素飽和度が94%未満か、94%以上かにおいています。

そのグラフを見てみましょう。


ご覧のとおり、ワクチン接種が本格化する前は、重症患者しか入院できなかったのに、ワクチン接種が普及して軽症でも受け入れることができるようになったというほど、重症患者比率が激減しているわけではありません。

ワクチン接種が本格化してから、未接種患者の重症比率が約60%から約55%へ下がったという比較的小さな変化です。

全体としてワクチン接種済みのグループのほうが重症化率は低いですが、これも5~15%といった差にとどまっています

ただ、入院中にデキサメタゾンを投与する必要のある患者の比率は、ワクチン接種済みだと大幅に下がることが見てとれます。

というわけで、「医療体制崩壊の危機」といった主張は明らかにおおげさだったことがバレてしまったわけです。

でも、この記事は「コヴィッド-19患者にもいろいろいるのだから、重症の患者に焦点を当ててこの疫病との取り組み方を考える必要がある。入院して検査してみたら、たまたまコヴィッド-19にもかかっていたことが判明したというような患者は、当然除外して考えるべきだ」というやや居直り気味の文章で終わっています。

明らかに持病が悪化して亡くなった方でも、コヴィッド-19に感染していたことがわかればすべてコヴィッド-19の犠牲者として危機感をあおっていたことはまったく忘れてしまったようです。

なお、「ワクチンを射っていてもやっぱり入院する人もいるのなら、射つ意味なんかないじゃないか」と考える人も出てきそうですが、そういう人にはコロンビア大学感染症専門家であるダニエル・グリフィン氏の、以下のことばを紹介しています。

「そういう人には、こう申し上げましょう。たしかに、入院するかもしれません。でも、ワクチンを射っておけば、生きて退院できますよ、と」

これが、ほんとうに一流大学の感染症専門家の言うことでしょうか。

これではまるで、ワクチンを接種していなかった人がコヴィッド-19にかかると、ほとんど全員お亡くなりになるとでも言っているようです。

ワクチン普及以前の、実際の
感染致死率はどうだったのか

次にご覧いただくグラフは、去年の11月末まだワクチン接種が始まる前のデータをまとめたものです。


当初、高齢で生活習慣病をお持ちの方が犠牲となるケースが非常に多かったのですが、その後8月ごろからは、ワクチンなしでも感染死亡率は約1.5%に収斂していました

「ワクチンを接種していない方々がコヴィッド-19にかかって入院すると、ほとんど生きて帰れない」というような数字ではまったくありません。

一流誌ばかりか、一流大学の感染症の専門家までもが、あまりにも露骨に恐怖心をあおり立てるようなことばかり言っていることがわかります。

読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想お待ちしてます。

コメント

匿名 さんのコメント…
目下のワクチン接種では、未接種者と有意な差が認められない様ですね。

長年研究・実用化されている”人インフルエンザウィルスのワクチン”の有効性が20~30%とも言われている中で、ぽっと出のワクチンが、3か月以上にわたり有効性80~90%を謳われていたのは、幻覚ではなかったかと思います。

個人的には、ワクチン接種や投薬がウィルスを変異させているのかとも考えますし、ウイルス自体が伝染を続ける事で変わって行く様にも感じます。

タイプは違いますが、鳥インフルエンザウィルスは、水鳥の中では常在ウイルス(無害)として振舞い、小動物を介して、家禽に伝播し、伝播・感染を続ける中で毒性が強まり、強毒性を獲得すると、感染家禽の死滅と共に、強毒株が無くなる?(極長期の休眠に入る?)生活様式を持ちます。

今回のコロナウィルスは、逆に、感染初期・発現時に強毒で有ったものが、感染を続ける中で、どちらかと言うと、毒性が弱まり伝染性が強まる変異が目立ちます。

いくら専門誌でも、寄稿者が門外漢とおぼしき人では、論調も押して知るべきかと思います。

栴檀の葉



増田悦佐 さんの投稿…
栴檀の葉様
いつもほんとうに貴重なコメントをありがとうございます。
今回も大変参考になります。
私は、どうせ同じホストの同じニッチに食いこもうとするのだから、変種とか亜種とかは感染力は強く、致死率は低くなったものがいちばんのさばるのは当然だろうと思っていました。
ホストを絶滅させるまで強くなってしまうものもあるし、鳥インフルエンザの場合、むしろそういうタイプのほうが一般的だという事実は、まったく存じませんでした。
これからも、ときどきご意見、ご感想をうかがえれば、大変嬉しいです。
Yamada さんのコメント…
いつも楽しく読ませて頂いております。
アメリカはワクチンより国民の肥満を改善する方が良いと思いますね。
肥満率が下がれば、致死率も下がるんではないでしょうか?
イタリヤが来月から全労働者にワクチンパスを義務化するそうです。
欧米はやっぱり”城壁”から抜け出せないみたいですね。
日本も同じことを言いだしてますが、そうならない事を祈ってます。
増田悦佐 さんの投稿…
Yamada様
コメントありがとうございます。そして、いつもご愛読ありがとうございます。
たしかに、アメリカ人はまず肥満率から改善すべきなのですが、もうそんな長期対策をとる時間的余裕はないでしょう。
イタリア人は個人的には気楽に付きあって行けそうな人たちが多いのですが、こと疫病となるととたんに恐怖心を剥き出しにしますね。
まあ、ヤマザキマリさんもおっしゃっているように、清潔を心がけていたローマ人の帝国が崩壊して以来、不潔な生活習慣で狭い城の中に閉じこもっていた期間が長かったので、仕方ないと言えばそれまでのことですが。
最近、ツィートでおもしろいやり取りを発見しました。
問い:タリバンはマスクもせず、ワクチンも射たずにアフガニスタン中の都市を攻略できたのに、コロナ対策をきちっとしているアメリカ軍はなぜボロ負けなの?
答え:タリバンはイスラム教だからね。1日5回のお祈りと3回の食事の前に必ず手を洗っていれば、米軍だってタリバン並みに頑張れるさ。
コヴィッド-19は、その程度の軽い疫病だと思います。