カリフォルニアの大火は、ほぼ全面的に人災

こんばんは 
今日は、アメリカの太平洋岸地域で相次いで起きている山火事について、ぜひお伝えしたいことを書きます。

アメリカでは、大きな事故があるたびになんとか被害者の肉声を聞いて、多額の賠償金を取れそうな自治体や大企業に対する訴訟に持ちこもうとする弁護士のことを「アンビュランス・チェイサー(救急車追っかけ族)」と呼んでいて、全体としてあまり評判の良くない弁護士たちの中でもとくに悪辣な集団と見ています。

前回、ドイツ・ベルギー・ルクセンブルクを襲った水害を取り上げた直後に、今日はカリフォルニア・オレゴン両州の山火事を取り上げるのは、自分がとにかくセンセーショナルな話題に飛びつくアンビュランス・チェイサーになるようで、ちょっと抵抗もありました。

ですが、カリフォルニアを中心に根強い勢力を持っている大企業と結託したいわゆるリベラル派民主党政治家たちは、人命と財産を守るという最低限の責務を無視して、自分たちの政治目的や企業利益・経営幹部個人の蓄財に奉仕する政治をしています

この実態を暴露することには大きな意義があると考えて、あえてカリフォルニア州の大火の多くについて出火責任を負うべき、パシフィック・ガス・アンド・エナジー(PG&E)というカリフォルニア州最大の電力会社と、ギャヴィン・ニューサム州知事の癒着ぶりを検証することにしました。

7月半ばだけで、カリフォルニア・

オレゴンの2州で4つの大火が発生

先週初めからオレゴン州とカリフォルニア州北部で猛威を振るったブートレッグ大火は、ようやく鎮火の兆しが見えてきました。

また、この大火から派生したと見られ、カリフォルニア州北東部のラッセン郡ドイルの町を中心に燃え広がったベックワウス複合大火もなんとか収まってきたようです。

ですが、カリフォルニア州中部のネヴァダ州との州境にあるアルパイン郡で起きたタマラク大火も、それよりちょっと西側のビュート郡で起きたディクシー大火も、今週の月曜日、19日の段階ではまだ延焼を食い止めるのが精一杯で、鎮火のメドは立っていませんでした。






不幸中の幸いとして人命の被害は、まだほとんど出ていないようです。しかし、貴重な家財ごと自宅が全焼してしまった方々は、ほんとうにお気の毒だと思います。


とくに2018年にキャンプ大火でパラダイスという町全体がほぼ全焼し、85名の犠牲者を出した地域のすぐそばで起きたディクシー大火でまたしても被災された方々は、憤懣やるかたない思いをされていることとお察しします。

連発する大火は人災だ!

最近、カリフォルニア州中心にアメリカ太平洋岸地域ではほぼ毎年延焼面積の大きな山火事が発生しています

ちょっと数えただけでも、2020年のゾグ大火、2019年のキンケイド大火、2018年のキャンプ大火と立て続けに起きていて、名前がつかない程度の山火事にいたっては、毎年4~5件は起きてるのではないかと思います。

この大火について、「地球温暖化危機説」をとなえる人たちは、こうした大火の連続は人為的な二酸化炭素排出量の激増が原因だから、二酸化炭素排出量を削減する努力をいっそう強化しなければならないと主張します

ほんとうにそうでしょうか。

もし、地球全体の平均気温が0.3~0.5度上がっただけで水害も大火災も激増するものなら、逆に平均気温が0.3度下がれが、水害も大火災もほとんどなくなるのでしょうか。どうも、そんなふうには思えません。

イギリス生まれでカリフォルニア州サンディエゴに移住したジョゼフ・ミッチェルという物理学者がいます。

彼は、カリフォルニア州の電力会社全体の経営がずさんで、人命や財産を守る意志をほとんど示さない姿勢に恐怖を感じて、自宅の屋根に周囲の大気温が一定の水準を超えたら自動的に散水する装置を設置しました。


一見、最近はやりの太陽光発電パネルのような黒いシートが、自動散水装置です。

サンディエゴ周辺で大火が起きたとき、このお宅のすぐそばでも全焼してしまった家もあった中で、この家は類焼をまぬかれただけではなく、植えてあったバラの木も無事だったそうです。

さて、ミッチェルがデータを調べたところでは、カリフォルニアの火事全体に占める電力会社の設備装置(送電線網、変電所など)から出火したものは10%に過ぎなかったそうですが、大火となってしまった火事に占める比率は40%にも達していたとのことです。

彼はその後、州の主催する山火事に対する安全策を検討する公聴会などでも積極的に電力会社の管理責任を追及する議論を展開してきました。

ところが、責任を回避したい電力会社ばかりか、州知事までもが終始電力会社を擁護する側に回っているのです。

カリフォルニアの山火事は、昨日今日始まったことではなく20世紀後半から延々と続いている人命と財産に対する深刻な脅威です。

しかし、PG&Eは早くも2011年に電力会社の施設が原因となる山火事発生に対する監視を強化する法案に対して、「確実に発生するコスト増に比べてどの程度に達するか不確かな利益しか得られそうもない」というまるで部外者のような発言をするとともに、以下のような公益事業者としてはあまりにも無責任な陳述をしていました。

PG&E「北カリフォルニアで電力施設からの失火が問題となるのは、ほとんど冬の突風に関してである。だからたとえこの法案が通過するにしても、対象となる企業は夏から秋にかけての山火事が多い南カリフォルニアの事業者に限定すべきであって、北カリフォルニアで電力を供給しているPG&Eは適用除外とすべきだ」

人命と財産を尊重しながら電力を安定供給することは、公益事業者としての電力会社の最低の使命のはずです。

その電力会社が「北カリフォルニアでは電力施設からの出火は主として冬に起きるのだから、夏から秋にかけての山火事に関する厳格な監視は不要だ」と主張するのは、1年に2回や3回自社が原因となる大火が発生しても、仕方がないという態度です。

また、2016年に同趣旨の法案がカリフォルニア議会に上程されたときも、当時の州知事ジェリー・ブラウンは「この立法の目指す監視強化は現行法規で十分カバーされている」と拒否権を発動したのです。

ジェリー・ブラウンというとヒッピーの若者がそのまま知事になってしまって、ちっとも人間的に成熟する気配を見せないまま長期政権を維持したことで、けっこう州民のあいだではいまだに人気のある知事です。

ただ、ときどき物議をかもすことを言ったとしても、カネづるはしっかり握っていて電力大手のようなタップリ献金をくれる企業は全面的に擁護する、カルフォルニア・リベラルの偽善性を象徴する人物です。

さて、こうした電力業界や州知事の妨害もあって、電力会社の施設からの出火の責任をあいまいにしてきたカリフォルニアでは、延々とPG&Eの所有施設からの失火が続きました。

とくに2018年に85名の犠牲者を出したキャンプ大火では、同社は未必の故意による殺人罪に問われたばかりか、基幹産業の大手企業としては異例の有罪判決を受けることとなりました

史上最大の犠牲者を出したキャンプ大火のあと、当時のCEOウィリアム・ジョンソンは「私どもは、被災者におかけしたご迷惑について深く深く反省し、二度とこのような火事を起こさないことに、経営努力を集中します」と謝罪しています。

しかし、PG&Eがいかに安全確保に無関心かは、次の写真が如実に物語っています。


キャンプ大火の翌2019年にキンケイド大火が発生し、慌てて泥縄で電柱の上にそれまでより高性能の電流遮断器を取り付けたときの写真です。

ところが、ご覧になってすぐおわかりのように、電柱を不燃化するために木材からコンクリートに取り換えることさえしていなかったのです。

経営手腕より「機会均等法」を優先するCEO選びも大問題

PG&Eのかかわった大火を年代順に眺め渡すと、2017年以降急激に頻度が上がっていることに気づきます。

この年何があったかのでしょうか。

年初に、当時まだ50代半ばで5~6歳のころ家族に連れられてキューバから難民としてアメリカにわたってきた、ゲイシャ・ウィリアムズがCEOに就任し、ヒスパニック系女性として初めてS&P500採用銘柄である大企業の出世コースを昇りつめたと話題になったのです。

この人、性的、人種的マイノリティでありながら、順調に高い地位にのぼる人に時として見受けられることですが、ようするに白人の中にある「今まで冷遇してきたマイノリティに対する埋め合わせをしたい」という潜在感情をフルに利用して、まったく自分の能力を超えた仕事を引き受けてしまったのです。

それは、彼女が就任してから、PG&E施設が火元ととなった山火事がそれまでは2~3年に1度のペースで起きていたのに、ほぼ毎年しかも複数の件数で起きるようになったことでわかります。

あえて勘ぐれば、前任のCEOは自社の規律が安全確保さえままならないほどたるみ切っていることを知っていて、大事故が起きたときにあまり痛烈な批判にさらされないようにという「配慮」でこの人を後任に選んだのではないかとさえ、思えます。

経営者としては無能だったとしても蓄財には才覚を発揮したようで、CEO就任直前の2016年には少なくとも100万ドル(約1億1000万円)強の純資産を持っていると報道されていました。

しかもその8割近くは自社株の売買で得た収益だったというのですから、日本の大企業で責任ある立場の人には考えらえないような「手腕」です。

さらに、キャンプ大火でいずれにしろ巨額――最終的には25億ドル(約2750億円)となりました――の賠償金を支払わされるので、会社更生法による自己破産しか存続の道がないとわかった時点での決断も、俊敏でした。

いち早くお手盛りの取締役会を開いて、年収の2.5~3倍に当たる「退職金」を自分に給付することを決議してから、辞職しています。

その甲斐もあって、2019年には彼女の純資産は約10億ドル(約1100億円)に増加していたそうです。

たとえキューバからの難民としてどんなに小さいころ苦労してきたとしても、私ならこういう人間は当然実刑判決を出して、刑務所にぶち込むべきだと思います。

ジェリー・ブラウンのあとを継いだギャヴィン・ニューサムが、一貫してPG&Eの経営陣に甘いのは、大スポンサーになってくれているからだけではなさそうです。

現職の州知事が「地球温暖化」の証拠
として、山火事の多発を歓迎している

カリフォルニア・リベラルの典型として、ニューサムは「地球温暖化がありとあらゆる自然災害の元凶であって、これ以上の環境破壊を食い止めるには人為的な二酸化炭素排出量をゼロにしなければならない」という信念を持っているようです。

そのために、まだ十分耐用年数の残っている天然ガス火力発電所をどんどん潰して、州内各地に太陽光発電装置を大量に設置させてきました。

太陽光発電も風力発電も自然条件次第で稼働率が大幅に変動するので、副次的な電力源にはなりますが、主要な電力源とするには危険すぎる発電法です。

去年秋のカリフォルニアの大火は、早めに消火活動ができていればもっと被害が少なくて済んだはずでした。

それなのに、極度に電力需給がひっ迫しており州内各地で計画停電をしていたため、消防ポンプを性能一杯に稼働することさえできなかったのが、大火となった一因と考えられています。

次の写真は計画停電中のオークランド市内の夜景です。

こういう無責任な人間が州知事として「山火事の多発は地球温暖化がのっぴきならない危機に至っている証拠だ」と称して、ますます供給の不確かな太陽光や風力に電力源を移行させようとしているのですから、これはもう未必の故意による殺人と言っても過言ではないと思います。

テキサス州知事は共和党系ですが、ニューサム同様「地球温暖化危機説」の信奉者です。

今年の2月、通常は温暖なテキサスの冬が厳寒となり、風車が凍りついて発電ができず、しかも原子力発電所や通常火力発電所は冬支度をせずにいきなり稼働を停止してしまっていたので、長期停電となりました。

その結果、100人を超える凍死者が出るといういたましい事態になったことは、ご記憶の方もおいでかと思います。

そして「地球温暖化危機」説の信者たちの中には「ニューサムでさえ再生可能エネルギー源への移行政策が生ぬるい。そもそも電力会社が中央集権的に大量に発電をして、送電線網を一手に握っているのがいけない。もっと小規模の発電に頼って、低い電圧でゆっくり小さな消費地ごとに送電して電力の地方分権化をおこなえば、大きな山火事は起きない」といった主張をする人たちもいます。

この人たちは、電力は発生した瞬間から確実に散逸していくものであり、送電中のエネルギーロスを最小化するには、なるべく大きな発電所で大量につくり出した電力を高電圧で最小の時間内に消費地に送り届けるしかないといった基本的な知識が欠けているようです。

世界には、カリフォルニアより木々が生い茂ったところも、カリフォルニアより暑いところもたくさんあります。

そうした地域で、通常火力の大規模発電所で大量に発電した電力を高圧送電線網で消費地に送り届けていても、カリフォルニアのように毎年大火災を起こしているわけではありません。

もはや年中行事になってしまった感のあるカリフォルニアの大火は、アメリカ社会全体がいかに腐敗堕落しているかを象徴する事実だと思います。

間違った信念に凝り固まってしまうことが、経済活動全体の効率を下げるばかりか、人命や財産に大きな損害を及ぼすという事実を、真剣に直視していただきたいものです。

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