―政治のあり方― ご質問にお答えします その7―

こんばんは。今日は私の政治一般に対する考え方についてのご質問にお答えします。

ご質問1:野党は邪魔しかしようとしていない、反対のための反対という印象が強いのですが、どう思われますか?

お答え1:私は、政権についていない政治家の役割はまさに「反対のための反対」をすることだと思っておりますので、それでいいのではないでしょうか。
国民の大半が賛成しそうな議案についてこそ、なんとかアラを探すのが野党の義務だと思います。時代の風潮に押し流される人が多いときには、どういう根拠であれ、とにかく大勢に逆らう人間がいたほうが、間違った方向に行きっぱなしになる可能性が低くなると信じているからです。

ご質問2:以前、『増田悦佐の経済教室』という本で政治家は長期政権よりも日替わりが良いとおっしゃっていましたが、コロナ禍でもお変わりないでしょうか?
下手にロックダウンで統制する悪辣さより後手後手の対応の方がまだマシということでしょうか?

お答え2:このご質問の後半部分については、まったくそのとおりだと思っております。
きびしいロックダウンを実施した国々では中小零細サービス業が壊滅的な打撃を受けました。
ですが、日本は政権担当者の決断力のなさが主な原因なのでしょうが、自粛や緊急事態宣言程度にとどまったため、被害は少なくて済んでいると思います。

また、ワクチン接種のペースが遅いことについても、とくにアストラゼネカ系のDNAを直接改変してしまうワクチンの危険にさらされる方がほとんど出ていないことは、優柔不断な政権のおかげだとさえ言えるのではないでしょうか。

間接民主主義はあまりにも欠点が多すぎます

前半については、かなり考えを変えました。
あの本を書いた当時は、政治・社会・経済の重大問題について立候補しているうちの誰かに自分が持っている権利を白紙委任する間接民主主義という制度しかないという諦めがありました。
それならせめて、猫の目のようにくるくる変わる政権にして、長期にわたって一定の方向に引きずられることがない日替わり政権の誕生ぐらいしか、期待は持てないなと感じていたのです。

どこか特定の分野に限定しても、この人に判断を任せられると思える人にはめったにお目にかかれないものです。それなのに、何年かに一度の選挙で誰に投票するかで、ありとあらゆる分野での判断を一任してしまうのはあまりにも無理が大きすぎるからです。

間接民主主義が優れた制度だと思っている人はほとんどいらっしゃらないと思います。
国とか、大都市では投票権を持っている人の数が多すぎて、だれがどの問題について、どういう方向で対処したいと思っているのかを、ダブルカウンティングも不正投票もなしに集計する方法がないから、しかたなく間接民主主義で対応しているのでしょう。

ですが、投票権が選挙権に変わる瞬間に、間接民主主義は民主主義であることをやめて金権主義に変わってしまいます
どういうことかと申しますと、選挙戦ではどんなに立派な主張をした候補者でも、当選したあとは有力産業や大企業、そして大富豪からの献金、実際にはワイロで、かんたんに主張を変えてまさにカネのある人たちに都合のいい政策を推進するようになるからです。

ちょっと極端な議論とお感じの方も多いでしょう。ですが、次にご覧に入れる2枚のグラフを見比べていただければ、決して誇張ではないことをおわかりいただけると思います。
まず、アメリカで特定の議案が議会で可決されるかどうかについて、ふつうの市民の意向がどの程度反映されるかをご覧ください。



グラフの見方をご説明しましょう。横軸にはふつうの市民が賛成している比率を目盛ってあります。
0~10%というほとんど全員反対から、90~100%というほとんど全員賛成までの10%ごとの枠で表示しています。

また灰色の棒グラフは、ふつうの市民の賛成が最低レベルから最高レベルまで10%刻みの枠をつくった中に、そのときの議会に上程された議案の何%がふくまれているかを示しています。
黒の折れ線グラフは、これらのふつうの市民の賛否が異なる議案の可決される確率を示しています。

ご覧のとおり、1割未満しか賛成者のいない議案でも、9割以上が賛成している議案でも、可決される確率はかろうじて3割を超える程度で、ほとんど変わらないのです。

それでは、人口全体のほんの数%を占めるに過ぎない経済エリート、具体的には大富豪の意向も、同じようにほとんど可決される確率に影響を及ぼさないものなのでしょうか?
次のグラフをご覧ください。


まったく違います。
大富豪の1割未満しか賛成していない議案はほぼ全部否決されますが、大富豪の9割以上が賛成している議案は約35%が可決されています。

つまり、全体としてアメリカの議会は大富豪の多数派が賛成する議案を可決し、大富豪の多数派が反対する議案は否決しているのです。
この点に関しては、民主党政権か、共和党政権かという違いはほとんどありません。


もちろん、アメリカでは有力な産業団体、大企業、大金持ちが政治家に献金するのは正当で合法的な政治活動とされていますから、これだけ顕著な差がつくわけです。
日本のように建前としては贈収賄が違法とされている国では、ここまで大きな差にはなっていないかもしれません。

ただ、職業としての政治家が存在するかぎり、世の中はどんどんカネを持っている人に有利で、あまりカネを持っていない人には不利な方向に向かうと思います。

その弊害は政治の世界にとどまりません

この露骨な金権支配は、政治の世界にとどまらないのが怖いところです。
大スポンサーから巨額の献金を得て、彼らに有利な法律をいくつもつくれる政治家が有能な政治家だという評価が定着すると、どうなるでしょうか。

さまざまな研究活動にたずさわる学者の世界でも、大スポンサーから巨額の研究助成を引っ張ってこられる研究者が有能な研究者だということになります。こちらはちょっと誇張した表現ですが、次の2枚組写真のようなことになってしまうのです。



今回の新型コロナウイルス騒動についても、早くから「これは深刻な生活習慣病を持っている人たちさえ手厚く守れば、一般の人たちの経済活動に影響を及ぼすような防衛体制を敷く必要などない」との声も上がっていました。

ですが、残念ながらそうした声を発していたのは、すでに研究の第一線から退いた名誉教授といったお立場の方々が多かったのです。
現役の研究者は、助成金獲得競争で不利にならないように「巨額の研究投資をして一刻も早くワクチンを開発しなければ、甚大な被害が起きる」と主張する方が多いように思います。

今から2~3年前までは、なるべくなら同じ政治家たちが延々と特定の大スポンサーに有利な法律や制度をつくり続けるよりは、なるべく短命内閣が次々に交代して、あまり大きな力をふるえないような政治にすべきだと思っていました。

それ以外に職業として政治を担っている人たちがカネになびいて、庶民には生きにくい世の中をつくってしまう傾向を防ぐ手段はないと思っていたのです。

今では間接民主主義の弱点は克服できます

でも今は違います。私は、ずっと楽観的になっています。
暗号通貨の発展とともに実用化が進んでいるブロックチェーンという技術を使えば、どんなに大きな人口を抱えている国でも、議案ひとつひとつについて、有権者の何人が賛成し、何人が反対しているかを正確に数えることはできるからです。

議案ひとつについて1ブロックの帳簿をつくって、有権者全員に暗号キーを渡し、投票期間内に賛否の投票をしてもらう。期限が来たら新しい投票はできないけれども、誰でも結果をチェックすることはできる。

議員という特権的な立場を振り回す人抜きで、あらゆる議案についての政策を国民投票の結果に従って出す。官僚はその政策を実施するだけ。もちろん、「こうしたほうがいい」とか「いや、そうではない」と議論する人たちは、少しでも多くの有権者に自説に従った投票をしてもらおうとするでしょうが、それで飯が食えるほどの収入になるわけではない。

つまり、職業としての政治家が消滅する世界です。少なくとも、現状よりはマシだとお思いになりませんか。

ご質問3:個人的には野党でも小池都知事や、吉村大阪府知事の方が無能なエリートで、彼らより自民党の方がまだマシな気がするのですが、いかがでしょうか?

お答え3:このご質問には全面的に賛成します。妙に東京への対抗意識を燃やす吉村さんが、小池都知事以上の熱心さで恐怖心をあおっているのも滑稽です。

でも、小池さんの場合、できるだけ危機意識をあおっておいて、その中で無事に東京オリンピックを開催に持ちこんだ名知事だったという筋書きにしたいのでしょうが、今さら「そんなに大騒ぎするほどの大疫病じゃなかった」とも言えず、かといって東京オリンピックが中止になっては困るで、身動きが取れない状態なのではないでしょうか。まあ、自業自得だと思いますが。


 読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想お待ちしてます。



コメント

土井としき さんの投稿…
[職業としての政治家が消滅する世界]が、希望ですよね。まさに、大衆的社会が優先される‥時に後退する歴代と経済。リベラルアーツの進退を楽しく過ごせることに、関心事が向かう高齢者になりました。
増田悦佐 さんの投稿…
土井様
コメントありがとうございます!
私も日本の大衆の知的水準を深く信頼しておりますので、技術的に可能になった今は、国政を全面的に国民投票に委ねるべきだと考えております。ご賛同ありがとうございます。